新校舎は多様な学習スペースも備えている。各階の廊下を「ギャラリースペース」とし、丸い机と椅子を並べた。生徒同士が自由に語り合い、互いに刺激し合って課題に取り組むことができる空間だ。
さらに思い切った設計にしたのが、1階で隣接する図書館と食堂。二つの施設は、ガラス扉で仕切られ、授業で使用したり、放課後は貸し出しの手続きをしなくても、図書館の蔵書を食堂に持ち出すこともできるという。
「建築会社と協議を重ねるうちに、限られた空間を有効活用できることがわかり、生徒に本を身近に感じてほしいという思いを形にしました」(鈴木教諭)
中高一貫の6年間は内面的に成長する時期でもある。鈴木教諭は「学校は自宅よりも長い時間を過ごす場所です。生徒に少しでも快適に感じてもらいたい」と願っている。
今から1世紀以上も前に、坪内逍遥が掲げた「誠」という人格養成の目標のもと、生徒の「個性」を伸ばし、世界に貢献する「有為の人材」を育てる──。大切にしてきた理念が、新校舎にはしっかり生かされている。(ライター・笹原依子=美和企画)
※AERA 2024年4月15日号より抜粋