ギャンブル依存症は治療しないと治らない病気。周囲がやってはいけないことは、ギャンブルを再開するきっかけになる「借金の肩代わり」や、「ギャンブルをしないことを約束させること」だという=2024年2月、米・ラスベガス(写真:AP/アフロ)
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 大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏が解雇された巨額窃盗疑惑。違法スポーツ賭博の借金返済に充てたと伝えられている。海外で成長を続けるスポーツ賭博とは。AERA 2024年4月15日号より。

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 オンライン経由やカジノ場でスポーツの試合に賭けるのがスポーツ賭博(スポーツベッティング)だ。大谷翔平選手の元通訳・水原一平氏が違法スポーツ賭博にのめり込む前に賭けたことがあるという米国最大手のオンラインスポーツ賭博サイト「ドラフト・キングス」のサイトにアクセスすると、スポーツ賭博の一端が見えた。

 賭けの対象は米国のプロスポーツや大学スポーツなどで、米国の4大プロスポーツ(野球、フットボール、バスケットボール、アイスホッケー)、ゴルフ、格闘技、大学野球、テニス、F1といった多様なジャンルが揃う。メジャーリーグの試合に賭ける場合、選手ごとの価値を示すサラリー(年俸)を見ながら、ルールで決められた上限額まで好きな選手を集めてオリジナルのチームを作る。

 集めた選手が現実の試合で活躍して成績が上がれば賞金ポイントが増え、不振なら減る。集めたポイントは現金に換えられる仕組みだ。

 桜美林大学教授の小林至氏は、先進国では多くの国でスポーツ賭博が解禁されていると話す。

「先進7カ国の中で解禁されていないのは日本だけです。賭けの対象はあらゆるプロスポーツと大学スポーツの試合などでアメリカでは昨年、スポーツベッティングに投じられた額は約18兆円に上ります。日本のスポーツも賭けの対象で、プロ野球、Jリーグ、Bリーグ、大相撲など、年間数兆円規模が賭けられています」

 スポーツ賭博が盛んな英国では1960年代から合法化されていたが、アメリカは2018年に州ごとの判断で解禁できるようになった。現在38州で合法となり、賭博を軸にスポーツ産業が動いている。

「それまでは海外のブックメーカーや違法業者を通じて、年間50兆円近くが賭けられていました。課税もできないし、違法業者は反社会的勢力につながっている可能性もある。八百長の温床にもなります。合法化すればガラス張りにでき、課税して税収増にも貢献するとの理由で解禁されたのです。米国のプロスポーツ業界は『ファン層を拡大する健全な遊び』としてスポーツベッティングを後押しし、業者から得られる税収は年間2千億円に上ります。賭けるために試合のテレビ中継を見る人も増えるため、スポーツコンテンツの価値上昇にもつながる。米国成人男性の3人に1人がスポーツベッティングを利用した経験があるところまで普及し、いまアメリカのスポーツ産業はベッティングを中心に回っています」

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