ドリルに書道セット、リコーダー、柔道着。入学後も「隠れ教育費」は続々必要になる(写真はイメージです/gettyimages) 

ドリル、書道セット、柔道着…入学後も続々

 隠れ教育費は入学後も続々必要になる。ドリルや書道セット、リコーダー、柔道着など、各教科ごとに必要な物品や、部活動、修学旅行の積立金など、私費で負担するものが出てくる。

さらに、給食費がかかる自治体もまだまだ多い。男性が住む地区では、小学校・中学校で給食費が月4千円程度かかる。男性は「小さくない出費だと感じます」と話す。

 義務教育を受けるために必要な諸経費はどのくらいなのだろうか。文科省が隔年で実施している「子供の学習費調査」(令和3年度版)によると、公立小学校では1年で学校教育費(学用品・実験実習材料費、通学費、修学旅行費など)が6万5974円、学校給食費が3万9010円かかっているという。中学校はそれぞれ、13万2349円、3万7670円だ。足し合わせただけでも、小学校6年間で62万9904円、中学校3年間で51万57円かかる計算になる。

塾代でさらに費用は膨れ上がる

 これは塾代や部活動でかかる費用などを含まない金額だ。それらとは別に、小学校は年間35万2566円、中学校は同53万8799円がかかることになり、費用はさらに膨れあがる。

 男性も、実際に子どもが小中学校に入るまでは、こうしたさまざまな費用を意識することはなかったという。

「経験してみて初めて、『あれもこれもお金がかかるんだ』とわかりました。その都度払っているので気がつかないですが、細々したものでも足し合わせると、公立でも意外と費用がかかるんですよね……」

 こういった費用は、いわゆる「隠れ教育費」と呼ばれるものだ。もちろん義務教育だから、必要なものを全て無償にすべき、というわけではない。しかし、少なくない額が私費負担となっている状況が続いているのはなぜなのだろうか。

費用を検討するセクションがない

 埼玉県の公立小・中学校で20年以上事務職員として働き、「隠れ教育費」研究室でチーフディレクターを務める栁澤靖明さんは、学校の構造的な問題点を指摘する。

「家庭にかかる費用を検討するセクションが確立されていないことが、一つの原因だと思います。そのため、制服などの指定品は家計にとって安くない出費であるにもかかわらず、そもそも『指定』であることや金額が果たして適正なのか議論されることが少ないです」

 つまり、体操着でも運動靴でも一度学校の“指定品”になると、ずっとそのまま続いている、というケースが少なくない。また、ワークやドリルなどの授業内で使用される教材についても同じことがいえる場合もある。

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