実際、インターナショナルスクールに通った娘たちは英語を習得。音楽についても、長女はフルート奏者となり、次女は作曲もこなしている。

 どうやら工藤には、高尚とされているものへの憧れがあるようで、画家や宝飾デザイナーとしての活動もそこから来ているのかもしれない。ただ、彼女に高尚なイメージを抱いている人はそんなにいないのではないか。むしろ、そこが強みというか、セレブになろうとしてなりきれない庶民っぽさみたいなものが親しみやすい身近さにもつながっているのだ。

 これは芸能界のレジェンドというべき美空ひばりあたりにも通じるもので、大金を稼ぎ、豪邸に住み、おしゃれな服を着ても、どこかしら大衆的な雰囲気が抜けないことが大事だったりする。ファンはそこに憧れとシンパシーとをバランスよく抱けるからだ。

 歌手としてのヒット曲にも、そんな揺るぎない大衆性みたいなものがある。「MUGO・ん…色っぽい」や「慟哭」をはじめ、その多くは作詞・中島みゆき、作編曲・後藤次利という組み合わせから生まれた。

 中島はそれまで、研ナオコや桜田淳子、柏原芳恵らに作品を提供していたが、もっぱら作詞作曲の両方を担当。しかし、工藤のプロデューサー・渡辺有三は中島を起用するにあたり、詞だけを依頼して、サウンドは後藤に任せた。後藤はおニャン子クラブやうしろ髪ひかれ隊、さらには工藤のソロについてもデビュー曲から手がけており、その流れを継承させたかたちだ。この結果、中島のフォーク性と後藤の歌謡ロックっぽさが絶妙に融合。よい意味で歌謡曲的な下世話さを含んだ、独特の味のある世界に仕上がった。

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アンチの多さも「特別な何か」