AERA 2024年4月8日号より

「住宅ローンと現金が2千万円ずつある場合、繰り上げ返済してしまうのも手ですが、ローンが0.3%で借りられていて、現金を0.5%で運用できるのなら、そういう手法もありです」

 現金があれば時間稼ぎができ、時間が稼げれば対策を考える余裕が生まれる。金利が本格的に上がる前に、できるだけキャッシュを増やしておけばそれができる。まずはローン状況を確認し、金利上昇時のシミュレーションも行ったうえで、応用できるかを考えよう。

 FPの横田健一氏は、「金利のある世界」の前提である物価上昇が続く中では、家計の「購買力」をいかに維持・拡大するかを考えるべきだという。

「為替がこれだけ変動する世界では、円だけで資産を持っていると家計の購買力が円の運命に翻弄されてしまいます。いざという時のお金や5年以内に使う予定があるお金は円で持っておく必要がありますが、それ以外の余裕資金は世界の様々な通貨に分散して保有するのがいい。そして、その外貨で価値を生み出し続ける資産を持つのです」

 通貨分散、持つべき資産の選択はどうすればいいのか。

「それこそ世界中の株式に投資するインデックス型の投資信託を買えばいいんです。買うのは円ですが、世界中に外貨で直接投資するのと同じ効果が得られます。株式はインフレに強く長期的に価値を生み出していく資産なので、長期間保有すると資産価値が積みあがっていく可能性が高い」(横田氏)

 家計を守って育てる……。「金利のある世界」では、手間をかけた態勢づくりが必要になる。(編集部・首藤由之)

AERA 2024年4月8日号より抜粋

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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