会見で記者から質問を受ける日本銀行の植田和男総裁
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 3月19日、日銀は「マイナス金利」を解除し、政策金利を「0~0.1%」に決定した。金利の引き上げられた「金利のある世界」で、家計を守るにはどうすればいいのか。AERA 2024年4月8日号より。

【図表】26年度に金利はどこまで上がる?

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「金利のある世界」に備える必要はありそうだ。

 まずは意識改革が必要だ。デフレ時代は「現金」が強かったが、「金利のある世界」では、「今の100万円」の方が「1年後の100万円」より価値が高い。銀行に預けておけば利子がつくからだ。みずほの試算では、その銀行預金でさえ物価に負けるのだから、デフレで広まった「タンス預金」がいかに不利かがわかる。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長が言う。

「現金で持つことのリスクが大きくなります。でも若い世代を中心に、そういう意識があるかどうか……。実際に経験しながら学んでいくことになるでしょう」

「ゆっくり返す手も」

 もう一つ、プラスの利子がつくと「錯覚」に陥る可能性があるから注意が必要という。

「物価が3%上がる時に金利が3%なら実質価値は何ら変わりませんが、3%の利子がつくと、もうかった気になるのが人間という動物です。どうしても『もらえる方』に目がいってしまう」(経済評論家の塚崎公義氏)

 いろいろ戸惑いそうだが、環境変化に感覚を慣らしつつ家計にも目を向けよう。

 やはり最大の焦点は変動型の住宅ローンだろう。金利上昇が不安なら固定型への借り換えが有力手段となる。今なら長期固定でも1%台で借りられる。まとまった資金があるのなら「繰り上げ返済」も手だ。しかし、

「手元に現金を置き、それをテコにゆっくり返す手もあります」

 こう話すのは、ファイナンシャルプランナー(FP)の中村諭氏だ。企業経営にならってキャッシュを積み上げ、いざという時にいろいろな選択肢が取れる態勢を整えるのだという。

「例えば金利が上がって返済額が増えた場合に、1年間やり過ごせるお金があれば、その間に今より数万円高い給料がもらえる会社への転職を探れる可能性が生まれます。お金がないと、考えることすらできません」

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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