アニメ見た世代に渇望
「その後、ドイツやイタリア、スペインを中心にヨーロッパで数多くの日本の漫画が翻訳され読まれるようになりました。最近では東ヨーロッパや中東、中南米にもその人気は広がっています」と、ビズメディア・ヨーロッパ代表の益田和之さんは言う。
「アメコミ文化はヒーローものが多く、アメリカではどちらかというと少年漫画が好まれる傾向があるようです。一方、バンド・デシネのジャンルは歴史ものも含めて広く、恋愛感情や人物の心情描写がより細かいので、フランスでは少女漫画や青年漫画も多く読まれているのではないかと思われます」
90年代から2000年代にかけてフランス語圏における集英社の漫画作品の出版エージェントを務め、現在は主に日仏間でアーティストやイラストレーターのエージェント業務を行っている貴田奈津子さんによると、フランスでは日本の漫画の読者層は幅広く、アメリカとは違い「おたく文化」とはくくれない裾野の広さがあると言う。
「もともと大人もバンド・デシネを読む習慣がある国だからかもしれません。例えば谷口ジロー氏の作品は人気ですし、『ガロ』の作家たちの作品も出版されています。80年代に日本のアニメがたくさんテレビ放映され、それを見た世代に渇望されてフランス語版の漫画が翻訳出版され始めましたが、例えばアニメ放映がなかった『電影少女』などの作品も大変人気があったので、もともと漫画文化を受け入れやすい土壌があったと思います」
(編集部・井上有紀子)
※AERA 2024年4月8日号より抜粋