コレステロール値が高かったことから、愛飲を始めた紅麹コレステヘルプ(男性提供)

透析に死亡例、「かなりひどい健康被害」

 29日の会見で当初、小林製薬は「未知の成分」について「構造までは見えてきた」としつつ、特定の成分には至ってないと述べていた。しかし途中、厚労省の発表で、会社側が28日時点で「未知の成分」をプベルル酸の可能性が高いと報告していたことが判明。この点に質問が集中し、「プベルル酸が直接的に腎障害、腎疾患を引き起こしているという仮説もまだ立てていない。毒性のメカニズムすら検証ができていない状態で、混乱させたくなかった」と弁明した。  

 小林製薬の紅麹成分配合サプリ摂取との因果関係が疑われる死亡例は28日午後10時時点で5人、入院者は114人だ。

「死亡例が報告される前、人工透析になったという報道の段階から、かなりひどい健康被害だと注目していた」

こう話すのは、「てらすクリニックひきふね」の船橋健吾院長だ。

医薬品ほど管理されず

「サプリメントや健康食品は、どれくらいの摂取で数値が下がるというデータがない。食品なので、医薬品ほど管理されておらず、異物が混入する可能性もある。反復、継続的に利用する場合、健康被害が生じるリスクも念頭に置いておくべき」(船橋院長)

 腎臓専門医で、年間700万PVの腎臓に関するメディアを運営する「赤羽もりクリニック」の森維久郎院長は「まだわかっていない部分が多く、サプリメントの良し悪しを議論したいわけでもない」と述べた上で、「長期的に使用するサプリメントがあるときは、健康診断などで体に害となっていないかをチェックしても良いのでは」と指摘する。

「βカロテン」サプリの事例

 森院長が例として挙げるのが次のケースだ。1970年代、緑黄色野菜を多く食べる人に胃がんや肺がんが少ないことが報告された。緑黄色野菜に含まれるβカロテンにより、がんが予防できるかもしれないという仮説が出て、βカロテンを含むサプリメントが人気になった。だが、近年、複数のランダム化比較試験の結果を統合したメタアナライシスで、βカロテンのサプリメント摂取は、膀胱がんや喫煙者での肺がん・胃がんのリスクと死亡率、飲酒者の脳出血リスクを増加することが報告された――。

「診療で、サプリメントにはデメリットが全くないと考えている人に多く会います。良い方向に動くか、悪い方向に動くかは確率論で、個人差もある。自分が飲んでいるモノは絶対ではないと考え、メリットデメリットを天秤にかけて、リスクヘッジをしてほしい」(森院長)

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サプリによる肝障害の報告も多い