小林武史さん。4月に開催される音楽イベントでは「ドローンを使ったアート・パフォーマンスにも注目してほしい」と語る(撮影/品田裕美)

従来の音楽ライブの枠を越えたステージに

「農地や牧場もあるクルックフィールズだから実現できる表現を追求したいと思っています。注目してほしいのが、ドローンを使ったアート・パフォーマンス。大学でDimension(Adobeソフト)による3D表現を研究している人たち、ドローンを使ったショーの経験を重ねているチームとやりとりしながら準備しているんですが、ジャンルの枠を超えるパフォーマンスになると思います。さらにコンテンポラリーダンスや映像などを含め、これまでにはなかったライブになるんじゃないかな。従来のエンターテインメントの流儀を越えている部分もあると思いますが、そこに向かっていかないと、新しい化学反応は起きない。櫻井くん、スガくんもそうですが、出演してくれるアーティストもそこに期待してくれていますね」

 ほかにも、音楽映画「キリエのうた」の主演Kyrie(キリエ)を務めた元BiSHのアイナ・ジ・エンドや、20年以上親交があるという宮本浩次など、小林が信頼するアーティストたちの公演が予定されている。いずれも今回の通常の音楽ライブとは異なるステージになる予定だ。 音楽家としての精力的な活動を続けながら、社会や環境問題に積極的に関わり、そこで得たつながりをもとに大規模な芸術祭をプロデュース。きわめて幅広い分野にわたる小林の活動のモチベーションはどこにあるのだろうか?

「僕の音楽のキャリアのスタートは、杏里さんの『思いきりアメリカン』(1982年/小林は作曲を担当)という明るいポップソングだったんです。映画『リリイ・シュシュのすべて』や『スワロウテイル』、ではディストピア的な世界を表現していて、その音の印象が強い人も多いかもしれないのですが。その二つはまったく違う音楽だし、両極端に思われるかもしれませんが、自分のなかではつながっているんですよね。ポイントの一つは、メロディー。ジャンルが違ったとしても、メロディーで物語を想起させることはできるし、リスナーのなかでフォーカスが合って、共通意識が生まれる。その感覚は今もずっとあるし、どんなレベルにおいても“つながる”という視点で見ようとしているところはあると思います」

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