2019年4月、AERAの「表紙」登場時にインタビューした。そのとき、強く印象に残っていることが二つある。一つは、「新しいミュージカルをつくりたい」と、日本語の歌と英語やスペイン語の歌を比較しながら目の前で楽しそうに歌ってみせてくれたこと。もう一つは、「こう見えて根はネガティブ」と語っていたことだ。
【写真】「矛先がここへ来て、やられる」と自身の胸を指さす城田優さん
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向き合ったのは自分の"傲慢さ”
今年2月下旬、再び話を聞いた。体感1.5倍速のスピードで論理的に話す、頭の回転の速さは変わらない。当時語っていた通り、俳優と演出の両方を担当する作品も増えた。5年の時を経て、城田優はどう変わったのか。あるいはまったく変わっていないのか。
2019年、ミュージカル「ファントム」で主演と演出を務めた。その後、23年の再演では、主演と演出、そして助演と一人三役を務めている。
演出の仕事で最も大変なことは何か。そう尋ねると、「クリエイティブな側面よりも前に、まず人によって伝えかたを変えなければいけないこと」という答えが返ってきた。
言葉一つとっても、受け取りかたは人によって違う。キャリアや人となりを考慮し、相手の繊細な部分に目を向けながら、時にプライドを傷つけないように、どう伝えるべきかを見極めていく。
「褒めるべきところを褒めてから伝えたほうが響く人もいれば、一言ですんなりと伝わる人も、一つのことを伝えるのに時間をかけたほうがいい人もいます。全員が同じ感覚を持っているわけではないので、ものすごく神経を使います。すべてに気を使いながら、よりよくするために一生懸命に時間を割く。演出をする以上、今後も続くわけですから、苦労するのだろうなとは思っています」
プレーヤーとして舞台に立ちながら、初めて演出家としての役割も担った「ファントム」初演は、自身のキャリアの転換点になった。そこで思い知り、向き合うことになったのは“自分の傲慢さ”だったという。