ドラッカーは、目標は自社の使命を果たすための行動の誓い(action commitments)であるとし、次のように言います。「目標は確実に達成できるとはかぎらず、むしろ方向性を示したものだといえる。命令ではなく方針なのだ。将来を決定づけるわけではなく、将来を切り開くために経営資源を動員し、熱意を引き出すための手段である」(※5)。ちなみに、この引用文の中にある「方針」という言葉も原書では、“commitments”です。
人が集まる組織においては、目標がなければ成果につながっていきません。企業の目的や使命は、目標がなければ単なるお題目で終わってしまいます。明確な目標があるからこそ、経営資源を動員し、人の熱意を引き出すことができるのです。
ちなみに、私が顧問を務める電子機器の販売会社A社は、ドラッカー経営学を全社員で学び実践したことにより業績がV字回復した会社です。A社が特に時間と労力をかけていたのは、マーケティングとイノベーションの活動です。顧客を知り尽くし顧客の期待以上の商品やサービスを提供し続けるための具体的な目標を設定し、それに基づく行動計画を立て、それを着実に実行していました。そのことがA社のV字回復の最大の要因でした。