実は、利益にも大きな機能があります。それは成果測定のための機能です。世の中に利益をあげられない企業はたくさんあります。何が悪いのか。それは、組織の中のマーケティング機能、イノベーション機能、経営管理的機能のいずれか、もしくはそれらのすべてがお粗末だから利益があがらないのです。

 しかし、企業にはこの利益という成果測定のための機能があるから、自分たちは何が悪いのかをフィードバックし改善していけるのです。

 企業にとって利益が大切であることは間違いありません。しかし、利益は企業の目的ではなく、企業存続のための条件なのです。

ドラッカー経営学における事業マネジメントの全体像

 企業の目的である「顧客の創造」のためには「マーケティング機能」「イノベーション機能」「経営管理的機能」が必要になります。そしてこの3つの機能が文字どおりうまく機能すれば、結果として「利益」がもたらされるのです。利益はこの3つの機能の上に置くべき目的ではなく、3つの機能の下にある結果に過ぎないのです。

 そして、企業は社会の中に存在します。「企業の本質は社会的存在」(※3)であるということです。したがって企業は常に、企業が社会に与える影響や社会自体が抱える課題の解決に責任を負っています。

 ですのでドラッカーは、組織をマネジメントするうえで目標設定が必要なのは、利益だけでなく次の8つの領域(※4)があると言います。

・2つの基本機能

 1.マーケティング        

 2.イノベーション

・経営管理的機能

 3.人的資源    

 4.資金

 5.物的資源

 6.生産性

 7.社会的責任

 8.必要条件としての利益

 企業のマネジメントとは、利益目標を設定してそれを追い求めるだけではなく、右記の8つの領域で明確な目標を設定し、目標達成のためにエネルギーを動員し、目標と実績に差が出ればそれをフィードバックし軌道修正していくことなのです。

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原価計算の全体像