楽天に移籍した浅村は19年に33本塁打をマークした

 故障者特例措置でFA権を取得した山川だが、「迷惑を掛けた分、禊を果たすべき」と西武残留を予想する声が多かった。FAは個人の権利だ。野球人生の岐路で熟考の末、ソフトバンクへの移籍を決断する。

 この移籍劇に、ソフトバンクファンからも反発の声が上がった。だが、球界関係者は違った見方を示す。

「FA権は長年プレーしてつかんだ権利。山川はいろいろ考えただろうし、とやかく言うべきことはないですよ。相手チームの主軸として、西武は抑え込まなければいけない選手であることは間違いない。ブーイングに関しては何とも言えないですね。球団が煽っているわけではないですし。ブーイングを含めた球場全体の空気が野球の醍醐味とも言えますから」

 ブーイングに関しては様々な意見がある。かつて、FA移籍で古巣の球団と対戦した時に大きなブーイングを浴びた選手に話を聞いた。

「僕はブーイングも野球の醍醐味だと思います。当時は辛い気持ちになりましたけどね(笑)。ここで球場の雰囲気にのみ込まれて結果が出せないか、この壁を乗り越えて活躍できるか。ブーイングを浴びた試合で勝利に貢献できたことで、本当の意味で新たなチームの一員になれたと感じましたね」

 すべてのファンがブーイングに賛同しているわけではないのも事実だ。

一人一人の選手に思い入れ

 西武ファン歴30年という女性は、複雑な表情を浮かべる。

「他球団のファンに『FAで選手が出ていくのは慣れっこでしょ』って聞かれるんですけど、そんなことないです。一人一人の選手に思い入れがありますし、私は片岡選手の大ファンだったので、巨人にFA移籍した時はショックだった。でも、ブーイングする感情にはならなかったですね。FA移籍した選手達は、今まで身を粉にして西武のために頑張ってくれましたから。むしろ、ブーイングを子どもに聞かせたくない思いがあります。たくさんの西武ファンが親指を下げてブーイングしている姿は、見ていて気持ちの良いものではないし、聞くに耐えない罵詈雑言を耳にしたこともありました。子どもを連れてソフトバンク戦を試合観戦するのはちょっと怖いですね」

暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ
次のページ
好不調の波が激しい