【即効フレーズ】
・「これからする話はまだ広まるとまずいので、他言無用でお願いします」
・「情報解禁になるまでここだけの話にしておいてくださいね」
 まだ外部に出回っていない希少なネタであること、あるいは外部の人に知れ渡るとリスクが高いネタであると匂わせることも、「希少性」を演出する手法の1つです。また、聴衆に質問することで、その話の希少性を暗に示す方法もあります。例えば、講演や研修といった複数人がいる場で、このように質問します。大人数での会議でも使えるでしょう。

【即効フレーズ】
・「○○を知っている方、手を挙げていただいてもいいですか?」
・「○○を一度でも耳にしたことがあるという方、いらっしゃいますか?」
 手を挙げる人が少ないことは承知の上で、あえて全体に向かって質問を投げかけます。「知っている人がほとんどいないぞ」ということを、その場の全体に知らしめることで、希少性をアピールできます。

「手に入れにくい」ことは、それだけで価値がある

 ところで、ネタに「希少性」を持たせると、聞き手の知的好奇心を刺激できるのはなぜなのでしょうか?「希少性」が人の心を動かす理由を、アメリカの社会心理学の権威であるロバート・B・チャルディーニは著書『影響力の武器』(誠信書房)で、次のように説明しています(原文のままではなく、著者が要約)。

[理由1]手に入れにくいものは、それだけ貴重なものであることが多いので、ある商品や経験が入手しやすいかどうかが、そのものの品質を見極める手っ取り早い手がかりとなるから。
[理由2]ある商品やサービスが手に入りにくくなるとき、私たちは「自由を失ってしまった」と感じるから。自由の喪失に反応して、自由に手に入る状態だったとき以上にそのものへの渇望が高まるため。

 どういうことなのか、補足して説明します。まず理由1について。情報過多の現代では、一つ一つの情報の価値や良し悪しを判断するのは容易ではありません。そんな中で私たちは、ある情報が入手しにくかった場合、それだけで「その情報は貴重である」と判断してしまいがちです。

 つまり、「希少であるかどうか」が話のネタの良し悪しを決める判断基準になってしまう、ということです。

 次に理由2について。「そのネタは、もう聞けない可能性がある」と知ったとき、私たちは「自由を失ってしまう」と感じるのです。すると、自由を取り戻したい気持ちが湧き、私たちはネタの希少性を知らされる前に比べて、そのネタを強く欲してしまうのです。

 付け加えるならば、希少なネタは、それを知るだけで「優越感」を得ることができます。聞き手は希少な話を聞いただけで、その情報をまだ知らない人たちよりも情報面で優位に立つことができるからです。「この希少な情報を手に入れたら、他の人よりも優位に立てるかもしれない」という気持ちも、相手の「聞きたい欲求」を刺激する源になっていると私は考えています。

 話し手にとってネタが希少であるということを、言葉でしっかり表現することは大切ですが、だからこそ難しいと感じてしまう人もいるでしょう。それもそのはず、希少性というのは、そもそも「自分では気付きにくい」という性質があるのです。だからこそ、そこに気付くことができさえすれば、あなたが伝える情報に、より一層の価値を加えることができるのです。

(犬塚壮志:大学受験専門塾「ワークショップ」情報科講師/株式会社士教育代表取締役)

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