出演するのは国際大会で活躍するスケーターたちに加え、高校生や大学生の学生スケーターになります。2月開催ということで、国体など大会が一段落しているタイミングということもありますが、学生スケーターにも出てほしいと思ったのは「人数で圧倒するパフォーマンスを見せたい」というところにあります。アイスショーでは、例えばオープニングやフィナーレで集団で踊る群舞などがありますが、単なるグループナンバーではなく、大勢で滑ることならではの圧倒的な迫力を出したいと思っています。

「滑走屋」とタイトルをつけた理由にも関連してきますが、学生スケーターも「滑る職人」なわけです。みんなが職人であって、職人たちによるクオリティーが高いパフォーマンスができれば、必ずしもスケーターとしての知名度は必要ないと考えています。

 今回は疾走感だったりスピードが生む迫力も出していきたいですが、そこにこだわって、出演する学生は東日本選手権や西日本選手権を見に行った上でオファーしています。

「枠の外」からの面白さ

――振り付けは元劇団四季で東京パノラマシアター主宰のダンサー・振付家の鈴木ゆま氏に依頼。鈴木氏とは高橋が主演した舞台「氷艶2019」に出演してもらってからの縁だという。

高橋:鈴木さんが今年演出した舞台を観に行かせてもらったときに、構図の使い方というか、すごいかっこよくて、いつかやってもらいたいなと思っていました。フィギュアスケートの振り付けの方によるアイスショーはけっこうあるけれど、そうじゃない方の振り付けというのはあまりありません。そこも実験的なんですけれど、フィギュアスケートのなかだけの常識というか枠で収まってしまうよりも、外の人だったら全然違う提案があったり、面白さも出てくると思うんです。

――観たいと思う舞台にしたいという思いを出発点とする「滑走屋」には、それだけにとどまらない動機があることを高橋の言葉に知る。

高橋:フィギュアスケート界を見渡しても、アイスショーを観に来てくださるお客様が減ってきているんじゃないかという実感があります。今の世の中だと、チケット代も高いですから、「こっちのショーは行くけど、こっちは行かない」と絞る傾向もあると思うんです。しかも他のエンターテインメントとの競争もあります。

 だったらどうすればいいのかと考えたとき、よりいっそう、フィギュアスケートが身近に感じられるようになって、テレビで観るものだけではなく足を運んで楽しんでいただくものになっていくことが大切だと思うんですね。もちろん、長年応援してくださっているフィギュアスケートのファンの方々も大切ですが、今まで観たことがないという人にも来ていただけるものにしていくことがこれからにつながっていくと思います。そのために、チケットの料金も、これまでのアイスショーからすれば低価格にしています。

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