「仕事は主に、頭を使うか、気を遣うか、体を使うかなの。一番大変なのは気を遣うだけの仕事。私は体を使う仕事を選んだ。正しい汗をかいて、一日の終わりに安らかに寝る。こんな幸せなことないわよ」
どのバイト先にも「エリート」がいて、そんな出会いも楽しいと言う。たとえば8カ月働いたホテルのベッドメイキング。最初は2時間半程度で3部屋のメイキングからスタートするのだが、そこには同じ時間で16部屋を仕上げるシニア女性がいた。
「一回、その人の仕事ぶりを見に行ったら、まるで酔拳。動きにまったく無駄がなかったの。すごかったわよ~」
蔑まれることも味わう
当然、嫌な思いをすることもある。トイレ掃除でしゃがんだときに頭上から怒られたり、倉庫のバイトで頭ごなしに怒鳴られたり。
「でもその翌日に、この国会議事堂で総理大臣とすれ違ったりするの。この落差、最高でしょう? 人として生まれたからには、蔑(さげす)まれ、バカにされることも味わいたいわよね」
と意に介さず大笑い。2022年に大病を患い、医療費におののいたが、高額療養費制度を使い乗り切った。とはいえ貯金がないことに不安も感じ、投資型保険に入ることを決意。月々約2万8千円を捻出するのは大変だが、その分は働けばいい。
「嫌なことがあってもめげない。逃げることも大事。恥なんてかけばいいのよ。働くことを楽しいと決めつけると、何でもできる。バイト人生、最高よ!」
(編集部・大川恵実)
※AERA 2024年3月25日号より抜粋