国際日本文化 研究センター教授 磯田道史さん/1970年、岡山県生まれ。著書に『武士の家計簿』『天災から日本史を読みなおす』『「司馬遼太郎」で学ぶ日本史』など(撮影/写真映像部・小林修)

磯田:僕は『街道をゆく』を四つに分けて考えているんです。まず海外。二つめが国内の畿内など日本の古い核の地域。それと列島の境目地域。その境目地域は2種類。北海道のオホーツク海沿いのモヨロ貝塚とか沖縄・糸満の漁民など特徴的な文化を持つ境目と、もう一つ、境目だからこそ日本を動かした変革主体になる境目。つまり薩摩、長州、肥前、土佐。司馬さんの旅は“周辺”がポイントです。

岸本:周辺は、「周縁」とも言い換えられます。ほかの国、ほかの民族との接点、最前線でもあるわけですね。

今村:いまは(滋賀県の)大津に住んでいるので、やっぱり、『街道をゆく』が始まった「湖西のみち」(第1巻)ですね。あの道は、僕もダンスの先生をしていたときに毎週通っていたんですけど、特徴的なのは、そこらへんのおばちゃんとかが出てくるわけ。そういう人に積極的に司馬さんは声をかけて、「ここ、こうだったらしいよ」みたいな話にも、ちゃんと触れていく。足を運んで、風を感じ、文章のなかに封印することで、やっと仏像に目が入るかのようになるというのを感じます。

文化外国語 専門学校校長、元NHKアナウンサー 古屋和雄さん/1949年、山梨県生まれ。NHK「街道をゆく」新シリーズの朗読を担当。96年3月「司馬遼太郎さんを送る会」の進行役を務めた(撮影/写真映像部・小林修)

(構成/フリーライター・浅井聡)

AERA 2024年3月18日号より抜粋

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