磯田:僕は『街道をゆく』を四つに分けて考えているんです。まず海外。二つめが国内の畿内など日本の古い核の地域。それと列島の境目地域。その境目地域は2種類。北海道のオホーツク海沿いのモヨロ貝塚とか沖縄・糸満の漁民など特徴的な文化を持つ境目と、もう一つ、境目だからこそ日本を動かした変革主体になる境目。つまり薩摩、長州、肥前、土佐。司馬さんの旅は“周辺”がポイントです。
岸本:周辺は、「周縁」とも言い換えられます。ほかの国、ほかの民族との接点、最前線でもあるわけですね。
今村:いまは(滋賀県の)大津に住んでいるので、やっぱり、『街道をゆく』が始まった「湖西のみち」(第1巻)ですね。あの道は、僕もダンスの先生をしていたときに毎週通っていたんですけど、特徴的なのは、そこらへんのおばちゃんとかが出てくるわけ。そういう人に積極的に司馬さんは声をかけて、「ここ、こうだったらしいよ」みたいな話にも、ちゃんと触れていく。足を運んで、風を感じ、文章のなかに封印することで、やっと仏像に目が入るかのようになるというのを感じます。
(構成/フリーライター・浅井聡)
※AERA 2024年3月18日号より抜粋