「孤独のグルメ」で紹介された「塩わさびの豚ロースソテー」は、市役所に展示されたことも=23年3月14日、千葉県旭市

 さらに、ドラマ孤独のグルメ』は、食事のシーンに時間をたっぷりとっている。それこそ、人気の根幹なのではと中村氏は分析する。

「味は“記憶”となってその人の脳に蓄積され、視覚を通じてよみがえります。ふつう、テレビドラマで味覚を感じることはなかなか難しいですが、『孤独のグルメ』は食事シーンの時間をたっぷりとることで、味を感じやすく、より没入しやすい構成になっていると思います。それは同様に、見る人の“食の記憶”を呼び覚ます効果もあるのではないでしょうか」

「味」は「記憶」として蓄積される。だからこそ再放送にもぴったりだと中村氏は続ける。

「“食”というテーマが再放送にマッチしたとも考えられます。初めて見た時はピンと来なくても、時間が経って見たらハマる場合もきっとあるでしょう。

 私たちにとって普遍的かつ大切な“食”が持つ奥深さと相まって、何度放送されてもその都度、味わえるのだと思います」

本質的な魅力は設定

 そろそろおなかがすいてくる人も多いだろう夕方の時間帯の再放送というのも、安定感がある。

『孤独のグルメ』の本質的な魅力はどこにあるのか? 中村氏はズバリ「設定の妙味」と断言する。

「これはもう、“背広姿の男性”が“一人”で“外食”をする、という設定の妙味に尽きると私は思います。

 馴染みの定食屋のランチのように食べ続けても飽きが来ない。バランスが実に絶妙で、ここがブレない限り、いくらでも物語を作ることが可能です。これは原作にも言えることですが、初期設定の勝利と言えるでしょう。

 サスペンスやミステリーなど、1話見逃したら展開や関係性がわからなくなってしまうドラマでもないので(笑)、気負わず、気楽に視聴することができます。これも長く愛されている理由かもしれません」

 ちなみに、「孤独のグルメ」ファンは新シリーズへの期待に湧いている。SNSなどでは、「シーズン11は10月からか!?」など予想もすでに飛び交っている。

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