「東大受験史」に新たな歴史が刻まれた。神奈川にある中高一貫の男子校・聖光学院で今年、100人の生徒が東大合格を掴み取った。1954年に設立した同校は、今や「超進学校」として開成や灘、日比谷などの伝統校と肩を並べる存在になった。近年、躍進を遂げている背景を工藤誠一校長に聞いた。
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「生徒にも保護者にも『こんなに成績が悪い学年はなかった』と散々言ってきました」
今春の卒業生について、あっけらかんとそう話すのは聖光学院の工藤誠一校長。2004年の校長就任時の東大現役合格者は26人で、09年に38人、14年に57人、19年に77人と多くの生徒を志望校に送り出してきた。
「私立中高一貫校のコロナ騒動への対応の差は、今年の結果に強く出ると思っています。中3の先取り学習の時期にオンライン授業になった代ですから」
全国の学校が休校になり、続々とオンライン授業に切り替わっていった20年春。かねてICTツールを導入していた聖光もすぐに対応した。
「でも、オンラインはダメだとすぐに思いました。定着度がすこぶる悪い。得意科目はまだしも、苦手な科目になると集中力が落ちてしまうんです」
夏休みの補習を増やすなどフォローした。それでも例年より成績は芳しくなく、それが冒頭の言葉につながった。
「ただ、それは学校のなかでの話でした。コロナ以降の4年間を振り返ったときに、生徒たちはよく頑張ってきたことがわかり、『散々なこと言って、悪かったな』なんて言いました」
保護者を前に、「成績が悪い」と言い切る姿には、「なんとしても志望校に受からせる」という自負と愛情がにじむ。コロナで自習室の人数制限が出たときは、別の校舎にスペースを確保。朝8時から夜9時まで、日曜も祝日も120人近い生徒たちが集まり勉強に励んだ。
「本当の成果」は10年後
学生生活の「通過儀礼」をしっかりやったことも、成長につながったと感じている。
「人数の制限はありましたが、文化祭も対面でやりきった。一つひとつの行事が生徒の自己肯定感にもつながります。受験もその一つで、ふたを開けてみないと結果はわかりませんが、例年であれば『この子は厳しいかも』という子が早慶にも受かっているので、期待しています」