源頼朝(よりとも)の「朝」は“名乗り訓”。画像は奈良国立博物館「頼朝と重源」展(2012年)

「源頼朝」もキラキラネーム?

「日本の長い歴史の中で、その当時はとっぴに思われたかもしれない名前だったり、漢字本来の意味とは違ったりする名前は数多く登場し続けてきました。わが子の名前には特別な意味を込めたいという思い入れから、独自の読み方でもいいじゃないかと考えるようになったのだと思います」

 笹原さんによると、すでに平安時代の国語辞典には名乗り訓と同じく、名前に使われる漢字と読み方をまとめた記述があったそうだ。

 われわれが知らないだけで、実は大昔も今も“キラキラネーム”のような名前はたくさんあり、その後、定着したものも少なくない。

 たとえば、飛鳥時代の豪族・蘇我入鹿(そがのいるか)、同じく飛鳥時代の将軍・阿倍比羅夫(あべのひらふ)などはその典型だという。

 笹原さんによると、入鹿は哺乳類のイルカ。比羅夫は当時「比羅夫貝」とよばれる貝が生息しており、それにちなんだ名前ではないかと考えられる。

「ひらふさんって、なかなかお目にかかることのない名前ですよね。教科書に載っているほどの人物だから、私たちはそれを批判することなく受け入れているのです」(笹原さん)

 貝にちなんだ名前は……「サザエさん」と「あさりちゃん」くらいだろうか。

 また、「名乗り訓」で有名な例は、源頼朝(よりとも)の「朝」だ。

 朝廷の仲間=友が転じて「朝」(とも)と読むようになったとも考えられているそうで、平安時代の終わりごろから貴族たちの間で流行りだした。

 名乗り訓ではないが、極めてユニークな名前の読みとして、伊達政宗の正室・愛姫(めごひめ)の「愛」がある。こちらは、かわいいという意味の東北の方言「めんこい・めごい」が用いられたものらしい。

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七海で「まりん」、愛を「らぶ」