※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 親の介護を通して、あるいは年老いた親と接するなかで、私たちはつい考えてしまいます。「自分の老後はどんなものになるのだろうか」。超高齢社会のなか、自分らしい老後を過ごすには自立が必要だと、介護アドバイザーの髙口光子さんは言います。くわしくうかがいました。

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長寿を手に入れたけれど、果たして幸せ?

 だれもが望む、「元気で長生きしたい」という願い。日本は敗戦後、豊かな国を目指して成長を続け、「長生き」を実現しました。いまでは世界一の長寿国となり、健康寿命も延びています。

髙口光子・元気がでる介護研究所代表

 しかし私はここにきて、「長生きだけで幸せといえるのだろうか」と考えてしまいます。

 あなたも、たとえば海の向こうの戦争の報道や、貧困にあえぐ人、文化の違いで迫害を受けている人のニュースなどに触れたときには、ほかと比べた自分たちの幸せを感じて、不満に思ったらバチが当たる、と思うことはあるでしょう。しかし日常的には「長生きできただけで私は最高に幸せ」と感じている人は少ないようです。

 なぜ、私たちは長生きだけでは素直に喜べないのでしょう。

 そこには、「どうやって長生きするか」というような、長生きの時間の長さだけではなく、長生きをいかに生きるかという、その生き方を具体的にとらえられない現状があると思います。

60歳過ぎてから必要な「真の自立」

 私は、人生100年時代を享受するためには、「年老いたが故の真の自立」を手に入れなければならないと、要介護の高齢者から教えていただきました。

 人生を30年ずつ三つに分けると、

・0~30歳:成長する、ひたすら学ぶ・教わる・経験する

・31~60歳:人や社会のために活動する。仕事、家庭、地域社会など

・61歳~:いままでをこれからにつなげ、要介護となってなお「真の自立」をする

 ということになるでしょう。

「真の自立」というのは、何もかも自分一人でできて一人暮らしができる、ということではありません。「できること/できないことを明らかにして、できることはする、できないことは周りの援助を求める」ということです。そして援助を受けたら、なんの含むところもないまっさらな感謝を表すことです。

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高口光子

高口光子

高知医療学院卒業。理学療法士として病院勤務ののち、特別養護老人ホームに介護職として勤務。2002年から医療法人財団百葉の会で法人事務局企画教育推進室室長、生活リハビリ推進室室長を務めるとともに、介護アドバイザーとして活動。介護老人保健施設・鶴舞乃城、星のしずくの立ち上げに参加。22年、理想の介護の追求と実現を考える「髙口光子の元気がでる介護研究所」を設立。介護アドバイザー、理学療法士、介護福祉士、介護支援専門員。『介護施設で死ぬということ』『認知症介護びっくり日記』『リーダーのためのケア技術論』『介護の毒(ドク)はコドク(孤独)です。』など著書多数。https://genki-kaigo.net/ (元気がでる介護研究所)

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