なぜ、社会への発信を強めていったのか――。この20年余りの坂本龍一の活動をまとめたドキュメンタリー映画が公開される。
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音楽家・坂本龍一がこの世を去り、あっという間に1年が過ぎた。
Yellow Magic Orchestra(YMO)での世界的ブレイク、ソロアーティストとしての活動やプロデュースワーク、映画「ラストエンペラー」の劇伴で日本人初のアカデミー賞・作曲賞を受賞するなど、その功績は今更言うまでもない。“教授”の音楽はこれからも世界中のリスナーを魅了し、数多くのアーティストに影響を与え続けることになるだろう。
坂本は精力的な音楽活動を継続する一方、社会的な問題にもコミットし続けた。2012年の原発反対派の集会に参加した際の「たかが電気のために、この美しい日本、国の未来である子供の命を危険にさらすようなことはするべきではありません」という発言で賛否両論を巻き起こしたことを覚えている人も多いはずだ。
00年代前半から少しずつ活性化してきたアクティビストとしての坂本龍一の活動。その軌跡を追体験できるのが、「TBSドキュメンタリー映画祭2024」で公開される映画『坂本龍一 WAR AND PEACE 教授が遺した言葉たち』だ。
「筑紫哲也のNEWS23」(1989年~2008年)をはじめ、TBSの報道番組で報じられた坂本龍一の活動やインタビューを1本のドキュメンタリー作品に仕上げた本作。そこに映し出されているのは、葛藤を抱えながらも、社会的・政治的な問題に関わり続けてきた教授の姿だ。
本作で取り上げられている最初のアクションは、モザンビークでの地雷除去活動の取材をきっかけに生まれたユニット「N.M.L.」。佐野元春、DREAMS COME TRUE、桜井和寿(Mr.Children)、SUGIZO(LUNA SEA)、TAKURO(GLAY)、TERU(GLAY)ほか、世界中のアーティストが参加し、2001年にシングル『ZERO LANDMINE』を発表。収益は地雷撤去に使われた。