あの頃はなんとなくそういうものかな……と思ってたのですが、大人になって色んな知識と情報をもってこのCMの動画を観るととても心がざわつきます。

 子供の頃の刷り込みは恐ろしいもので、いまだに材木置き場のような場所(CM中の行進のロケーション)に通りかかると、あの歌が頭に流れます。

「戸締り用心、火の用心」をチンパンジーにタバコ吸わせてまで伝えたかったのかと思うと、昭和という時代の狂気に震えますね。

 ……してみると、今流行ってる「ミーム」ってカタチとしては「なめ猫(なめんなよ)」と同じですね。「猫ミーム」を観た時、「なめ猫って剥製でみんな身体のなかに針金が入ってるんだよ」と友達にデマを吹き込まれ、怖くて猫を凝視出来なくなったことを思い出しました。

「なめ猫」も「猫ミーム」も「タバコを吸うチンパンジー」も、あんなの全然可愛くないよ。なんか凄く怖い。人間が動物に手を加えて表現するモノってなんか怖くないですか?

 野良犬が電信柱の脇で自由にノグソしてるほうが、よっぽど心安らかに見てられる気がします。そんな時の犬も、また安らかな顔をしてるんだよな。

 締めようとして、また「不適切」な方向に舵を切ってしまいました。

 というわけで「いちにーち、いちぜーん!!」

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春風亭一之輔

春風亭一之輔

春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/落語家。1978年、千葉県生まれ。得意ネタは初天神、粗忽の釘、笠碁、欠伸指南など。趣味は程をわきまえた飲酒、映画・芝居鑑賞、徒歩による散策、喫茶店めぐり、洗濯。この連載をまとめたエッセー集『いちのすけのまくら』『まくらが来りて笛を吹く』『まくらの森の満開の下』(朝日新聞出版)が絶賛発売中。ぜひ!

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