落語家・春風亭一之輔さんが連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今回のお題は「不適切」。
ドラマ「不適切にもほどがある!」が話題です。コンプライアンスやら、ジェンダーやら、リテラシーやら、そんな言葉がなかった昭和と、そんな言葉で溢れかえってる現代を行ったり来たりする話(だいたい)。私も毎週欠かさず観ています。第五話以降……なんかそれどころじゃないシビアな話になってきました。最終回までまだ数話残ってますが、これからどうなるんでしょうね。
私も昭和の子供だったので、あの頃のアレは一体何だったんだ?……みたいなことを時折考えたりします。
たとえば……。
「散歩中の犬のウンコはどうなってたんだろう?」
今はそのまま放置なんてあり得ないコトですが、昭和に犬のウンコを持って帰る人は尋常でなく意識の高い人か、それを家庭菜園の肥やしにする人くらいでしょう。街角にほっぽらかしのウンコは恐らくその付近にお住まいの方が片付けていたのか。昔は「犬のフン、お断り!」みたいな手書きの貼り紙がそこかしこにありました。それによく登下校中に犬のウンコを踏んでたっけ。靴を履いてるとはいえ、排泄物を踏む感触は最悪です。一瞬にして目の前が真っ暗です。
落っこってる木の枝やアイスの棒で靴底の溝から犬のウンコをほじくり出しながら、この世界から自分が消えてなくなりたくなる……あんなに精神的にダメージを受ける哀しい作業はありません。刑罰に取り入れたらいいと思います。今の小学生はそんな経験はほとんどないのでしょう。母さん、あの頃の転がってた犬のウンコはどこへ行ってしまったのでしょうね。犬も放置されて、恥ずかしかったのではないでしょうか。全てが昭和の小学生のズックの底にへばりついてしまったのでしょうか……。