1月22日にApple 表参道で行われた、Apple Music Classicalプレス発表会の様子(Apple Japan提供)

 今年日本に上陸したばかりの「Apple Music Classical」は、世界最大級となる500万以上のクラシックの楽曲がそろう、ファン垂涎のアプリだ。「音楽は我々のDNA」と自負するAppleが、なぜ今クラシックに熱視線を向け、注力するのか。近年大きな“転換点”を迎え、盛り上がりを見せているという、クラシック音楽界の今を取材した。

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 Appleは1月24日、「Apple Music Classical」の日本国内での提供をスタートした。Apple肝煎りの新サービスということで、「海外向けにリリースされた昨年時点で注目していた」と話すのが、デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏だ。

 コウガミ氏が画期的だと捉えているのが、音楽アプリでクラシックを楽しむ上でユーザーのストレスとなっていた、“検索”の課題を解決したことだという。

「クラシックの場合、たとえば『ベートーヴェン』『ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団』といったキーワードだけでは膨大な楽曲がヒットしてしまい、目当ての曲にたどりつけない問題がありました。しかし今回Appleが開発したアプリは、指揮者やアーティスト、楽器、作品番号など様々な項目を組み合わせて検索できるので、聴きたい曲がすぐに見つかる。デジタル空間でクラシックを楽しむ人を増やすきっかけになり得るツールだと思います」

 だがクラシック音楽といえば、初心者には「敷居が高い」イメージが強い。Appleが商機を見出すほど、市場は盛り上がっているのだろうか。 

 実はコウガミ氏によると、コロナ禍を機に、国内外でクラシック人気が高まっているという。その背景として挙げられるキーワードが、「ムード・リスニング」だ。

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大谷百合絵

大谷百合絵

1995年、東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業。朝日新聞水戸総局で記者のキャリアをスタートした後、「週刊朝日」や「AERA dot.」編集部へ。“雑食系”記者として、身のまわりの「なぜ?」を追いかける。AERA dot.ポッドキャストのMC担当。

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