3月8日の「国際女性デー」にあわせ、Z世代の女性向けエッセイ投稿サイト「かがみよかがみ(https://mirror.asahi.com/)」と「AERA dot.」が、コラボ企画を実施。「ニュースとわたし」をテーマに、女性限定でエッセイを募集しました。多くのエッセイの投稿をいただき、ありがとうございました。
 投稿作品の中から優秀作として5本のエッセイを選抜、「AERA dot.」で順次紹介していきます。記事の最後には、鎌田倫子編集長の講評も掲載しています。
 ぜひご覧ください!

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2022年4月、奈良女子大学が日本の女子大学で初めて「工学部」を新設した。2年目の2023年夏、同校工学部長が設立の背景について語った内容をニュースで見かけたのだが、それが印象的だったのでよく覚えている。工学部長の藤田盟児氏は女性にとって魅力的な工学部のあり方について、男女比が半々である海外の大学の傾向から「人や社会をどうサポートするのかという視点から工学を学ぶスタンスが徹底しており、リベラルアーツ(教養)を重視している」と分析していた。

私はこのニュースを見たとき、大きく頷いてしまった。
 

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文系出身で得意科目は国語と英語だった私がエンジニアになったのは3年ほど前。そのときにいた会社でパニック障害になりかけながら、転職サイトを夜通し検索しながら私は考えていた。

私がいまできること、したいことはなんだろう。考えたとき、新卒で入社した会社でお世話になっていたエンジニアの方々の姿が頭に浮かんだ。システムを売る会社で上司に怒鳴られお客さんに怒られ、なにも分からないまま困り果てているときに助けてくれたのはエンジニアの方々だった。

私はエンジニアがなにをするのかもプログラミングがどんなものかもよく分からないまま、とあるエンジニアの求人に手を伸ばした。嫌な顔ひとつせず助けてくれた、その働きがなければ私たちは商品を売ることができない、表には出ないが必要不可欠な人たち。私は本当はずっとそんな存在に憧れていたのだと、そのときに気づいた。2度の面接と試験を経て倍率30倍超を突破し、私は晴れてエンジニアとなった。
 

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 それでも、応募した夜に涙が出たこと、入社式の朝の緊張や恐怖は今でもはっきりと思い出せる。

怖かった。

男性ばかりで常に怒声罵声、残業三昧、深夜も休日も出勤という悪いイメージばかり。家族からも友達からも心配された。でも、「人の役に立ちたい」と思った。

踏ん張るぞ、やってみせるぞ。そう歯を食いしばって出社した私の決意は、丁寧な研修3ヶ月、現場に出ても残業なし、いつでも休みはとれる、質問すればするほど褒められ出来ることが目に見えて増えていくというなんともホワイトな環境によって、少しずつ「なんとかなるかも……」という安堵に変わり、今では「こんなに楽しく人の役に立っていいの!?」という嬉しさになっている。
 

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