鈴木おさむさんのインスタグラムから

 だが、残金は少ない。だけど、TーPablowはリベンジしたいと言っている。

 そこで、思わず言ってしまった。「僕が自腹で100万円渡しましょう」と。

 企画として成立してないのはわかってる。だけど、なんか、奇跡を信じてみたくなってしまったのだ。

翌日、三菱銀行に行き、自腹の100万円を渡し、TーPablowは単身韓国に行った。

10時間で帰ってくると約束したのだが。

 やっぱり帰ってこなかった。連絡も取れなくなった。

 終わった。

 そう思っていた。撮影最終日になり、TーPablowはようやく帰ってきた。

 番組の最後まで撮りきり、1000万円は使いきった。1000万円を入れていたアタッシェケースは空になった。

 最後に一人ずつ感想を言っていくなかで、TーPablowは自分のかばんからなにやら取り出した。

 すると、そこには1000万円が入っていた。TーPablowは韓国に行き、飯を一切食わずに、寝ることもなくコーラだけ飲み続けていると、どんどん研ぎ澄まされて、最終的に900万円以上を勝ち、1000万円ちょっとを勝って持ち帰ってきたのだ。

 空になったアタッシェケースに1000万円が戻った。

 僕は30年以上この世界で番組作ってきて、これだけギャンブルに勝った瞬間を初めて見た。

 奇跡を信じたら奇跡が起きた。

 韓国に行く前にTーPablowが言っていた。川崎の不良だった自分たちが東京ドームに立つことは奇跡だと。

 そう、そんな奇跡を起こした彼だからこそ、番組の最後にも奇跡を起こせるのだろう。

 ドームで格好良く散っていった彼らの散り際を見て、自分が辞める日もちょっとずつ近づいてきたことを感じる。

 自分らしく終わりたいな。

鈴木おさむ(すずき・おさむ)/放送作家。1972年生まれ。19歳で放送作家デビュー。映画・ドラマの脚本、エッセイや小説の執筆、ラジオパーソナリティー、舞台の作・演出など多岐にわたり活躍。著書も多数あり、パパ目線の育児記録「ママにはなれないパパ」(マガジンハウス)、長編小説『僕の種がない』(幻冬舎)、2月に舞台上演する「芸人交換日記〜イエローハーツの物語〜」(太田出版)など。漫画原作では、「ティラノ部長」、「お化けと風鈴」、「インフル怨サー。~顔を焼かれた私が復讐を誓った日~」、「愛の掛け惨」など。32年間続けた放送作家を3月31日で辞めることを発表。初めてのビジネス書「仕事の辞め方」が好評発売中

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