実力と自信を身につけ、11年、名古屋大学大学院に入局。大学病院の呼吸器外科は、ほかの病気を合併する難症例が多く集まる。国立がん研究センターで学んだことの応用編のような、ハードな日々がさらなるパワーアップになった。

肺移植の施設認定や医療機器の開発に挑む

 「当科の芳川教授は、常に新しいことに積極的にチャレンジさせてくれます。それで『肺移植』を勉強する機会を得ました。悪くなった肺を取るのが呼吸器外科医だと思っていましたが、新しい肺にできるというのがとても魅力的でした」

 これまで同院では肺移植を実施していなかった。中村医師は同院への肺移植導入を目指し、世界的権威がいるオーストリア・ウィーン医科大学に1年間留学。23年に申請が認められ、全国11例目、中部地区で2例目の「肺移植実施施設」に指定された。現在、肺移植を希望する患者の登録を進めている。

 並行して近未来の手術を想定した研究にも取り組み、企業やAIの専門家とともに医療機器の開発に携わる。「再現性のある治療法を確立したい」と意気込む一方で、技術が進歩しても、昔ながらの方法論を忘れてはならないとも言う。

 「新しいテクノロジーであっても、問題が起きることもある。これまで培われてきた技術がトラブルシューティングに必要な場面も出てきます。また、どんなに技術があっても、人間同士の信頼が重要です」

 医師人生を振り返ると、行った先々でいい先輩、指導教授との出会いがあった。

 「外科医には、困難な局面に向き合えるような精神力、胆力が必要だと、教えてもらいました。そして力をつけるためには、あえて厳しいところに身を置く姿勢も重要です。今は私が、後輩たちに伝えています」

(取材・文/伊波達也)

※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』より

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