名古屋大学病院 呼吸器外科講師 中村彰太医師 写真/上田泰世(写真映像部)
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 医師もひとりの人。なぜ医の道を選び、どう修練を積み、今何を目指しているのか。人それぞれ経験や思いは異なる。しかし、時間に限りがある診療の現場では、医師の人となりや胸の内を詳しく聞くことは難しい。そこで週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』では、最前線で活躍する注目の外科医6人をインタビューした。本記事では肺がん手術の注目外科医、名古屋大学病院 呼吸器外科講師 中村彰太医師を紹介する。

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 名古屋大学病院の呼吸器外科は肺がん手術において、従来の開胸手術、からだの負担が小さい「低侵襲」のロボット支援下手術、「胸腔(きょうくう)鏡補助下手術(VATS)」を、まんべんなくおこなっている。

 なかでもロボット手術の肺切除数は全国1位の121例(2022年)。同科講師の中村彰太医師も、通算100例以上を手がける。さらに、中皮腫や胸腺腫などの希少がんにも対応。同科教授の芳川豊史医師が掲げる「全人的医療」をスタッフ一丸で追求しているという。

 「大学病院である以上、呼吸器外科が取り組むべき疾患は、『不得意』なくすべて対応するというのが当科のポリシーです」

 日々現場の最前線に立つ中村医師。意外にも医学部受験時は、精神科医志望だった。

 「中高校時代に、心を病んでしまった友人が複数いて、そういう人たちを助けたいと思っていました。それが、いざ臨床実習に入ると外科がいいなと。患者さんを自分の手で助けられる仕事という点に憧れました」

 消化器外科医を目指し、大垣市民病院に入職。そこで呼吸器外科の重光希公生医師と出会い、進路を変更する。

優秀な先輩医師らの指導で実力と自信が身についた

 師のすすめもあり、国立がん研究センター中央病院の外科レジデント(修練医)として3年間、がん診療全体を学んだ。

 「全国から集まった『がんを学びたい』という、いいライバルたちに囲まれて、競うように勉強しました」

 同センターで現・呼吸器外科長の渡辺俊一医師と出会う。

 「1年ほど呼吸器外科にいましたが、一緒に手術室に入っても、最初は全く執刀させてもらえませんでした。そこで渡辺先生の手術を完全コピーできるくらいまで、ビデオを見て復習しました。すると3カ月後、『やってみろ』と。うれしかったです」

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