このほかコンソールは開放型であり、宇山医師が言う。
「専用の3D眼鏡をかけてモニターの前に座り、映し出される立体画像を見ながらアームを操作し、周囲のスタッフとコミュニケーションが可能です」
ダビンチ以外で初めて登場した手術支援ロボットであり、19年に承認された「センハンス」も4本のアームが独立しており、コンソールは開放型である。
センハンスは従来の腹腔鏡手術機器を利用したロボットで、適応疾患や保険点数(医療費)は従来の腹腔鏡手術と同じ扱い。ただ、離れた場所からアームを操作する仕組みはダビンチと同様であり、関係学会は「ロボット」として扱っている。
「ほかの機種にはない触覚フィードバックシステムなどがありますが、まだ改良の余地がある機器です。現時点でロボット支援手術の適応でない胆石症や虫垂炎、鼠径(そけい)ヘルニアなどにも保険適用されているのは進んだ状態といえます」(竹政医師)
「従来の腹腔鏡手術と同様に、ロボット用鉗子がリユースできることから、医療機関はランニングコストを抑えられることになります」(宇山医師)
エビデンスレベルで「ロボット」が第1選択も
23年3月に承認された「アンサー」は、これまで紹介したロボットとはまったく異なる、術者が操作する「助手ロボット」である。竹政医師が説明する。
「アンサーにはメスなどの術者側の道具がありません。術者は通常の腹腔鏡手術をおこない、助手に代わってロボットが鉗子や内視鏡カメラを保持し、術者がそのロボットをコントロールするのです。外科医不足の現状に対応したロボットといえます」

アンサーまで含めれば、23年12月時点で7種類の手術支援ロボットが承認されている。竹政医師は、
「がんなどの外科治療が必要な疾患は、居住地などの生活環境にかかわらず平等な医療を受けられるべきですが、現在の日本では医療偏在が加速し、深刻な外科医不足となってきています。これらの問題の解決に手術支援ロボットによる遠隔手術の実現が求められています」
と話す。宇山医師も、
「ロボット支援手術はまだ実験的な手術のように思われがちですが、例えば胃がんの手術なら、いまやエビデンスレベルでロボット支援手術が第1選択だと考えています」
として、ともに手術支援ロボットのさらなる発展に期待を寄せている。
(取材・文/近藤昭彦)
※週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2024』より