スリム化されたヒノトリ サロアには「力覚」

 20年に(薬事)承認された「ヒノトリ」は国産初の手術支援ロボットとして注目を集めた。

 「ヒノトリはXiと似た機構をもつ機器です。これをメイド・イン・ジャパンでやること、そしてこれまでのダビンチ独占状態から健全なロボット医療市場を形成し、日本初の機器を世界に発信することは意味が大きい」

 と竹政医師が言うように、4本のアームが一つの機器から出ている、術者が機器に顔をうずめるようにしてコンソールを見る(没入型)などは、ダビンチXiと共通である。没入型コンソールでは術者は患者の体内に入り込んだ感覚になるという。

 「Xiと似ていても、日本人の体格を考慮してXiよりアームがスリム化され、衝突しにくい構造になっています。また、遠隔手術に対応し実証実験も進行中です」(宇山医師)

写真提供/インテュイティブサージカル合同会社、株式会社メディカロイド、日本メドトロニック株式会社、アセンサス・サージカル・ジャパン株式会社、リバーフィールド株式会社 iStock.com/PhonlamaiPhoto

 国産のロボットとしては、同じく遠隔手術にも対応した「サロア」も23年に承認されている。その特徴を宇山医師が語る。

 「ほかのロボットはすべてワイヤで動きますが、サロアは空気圧で動くことから手術中に臓器に触れたり縫合糸を引っ張ったりする抵抗感を数値化して、鉗子をつかんだときの力加減がわかる『力覚(りきかく)』があるのです」

 術者が座るコンソールはパソコンやテレビを見るときと同じようにモニターを見る開放型。アームはほかのロボットより1本少なく3本である。

 「がんの難しい症例では4アームが必要になってきますので、症例に合わせて使うことになるでしょう」(竹政医師)

ヒューゴは独立型アーム 「触覚」があるセンハンス

 ヒノトリやサロアはアームの付き方がダビンチXiと似ているが、まったく異なるアームをもつのが22年に承認された「ヒューゴ」である。4本のアームがそれぞれ独立した形状をもつ機器である。

 手術の部位や患者の体格、そしてアーム同士がぶつからないことなども考慮してアームの配置を決める。竹政医師が言う。

 「ヒューゴはダビンチとは異なるコンセプトで開発されたロボットで、開発拠点となった米国ではいまだ承認が取得されておらず、日本がリードして臨床データを発信する現状です」

「本家」の米国に先駆けて日本で承認されたヒューゴ。術者は竹政医師。(写真提供/札幌医科大学・竹政医師)
「本家」の米国に先駆けて日本で承認されたヒューゴ。術者は竹政医師。(写真提供/札幌医科大学・竹政医師)
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