一方で、意外と苦心したのが包丁やへらの表面。「まないたに固定した画面に、包丁をトントンと垂直に当てた時など、しっかり反応して画面上の具材が切れてくれないと困る。ちょうどいい反応の具合を見つけるのに、導電性スポンジをどんな具合で包丁に仕込んだらうまくいくか、時間をかけて探りました」。苦労のかいあって6月28日開催の同社ワークショップでは、2歳や3歳の子どもたちが一心不乱にトントンと音をたてる様子が見られた。

 発案は現・クックパッド(株)執行役の堀口育代さん。深津さんらカヤックのメンバーとともにブレスト会議を重ね、誕生した。深津さんは「アプリを使う人が求めるものに、最適なテクノロジーを寄り添わせて提供したい。ぬくもりある段ボール素材とのかけあわせで、無機質な画面から遊びが外に飛び出す作品を今後も作れたら」と意欲を示す。

 アプリは現在ダウンロード可能だが、キットは未販売。来年の販売が目標だ。「ダンボッコキッチン」はもともとクラウドファンディングサイト・Makuake(サイバーエージェント)で資金調達し、今年5月の出資者へのキット送付と同時に、アプリ配信開始となった経緯をもつ。今後はキット販売で利益を出し、アプリ開発費用を捻出する狙い。子ども向けアプリ業界では、採算面で撤退を余儀なくされる企業も多い中、新たな資金調達モデルとしても注目されそうだ。

 同社はままごと以外にも、ダンボッコシリーズとして別作品を順次発表予定である。(ライター/デジタルえほんジャーナリスト 寺島知春)

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