フジロックフェスティバル2023の会場(新潟県湯沢町)

 フジロック第一弾ラインナップが発表され話題になった「クラフトワーク」。YMOやサカナクションなど、日本のアーティストにも多大なる影響を与えてきたクラフトワークとは?

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 この時期、音楽ファン(特に洋楽リスナー)の関心事は「今年のフェスにはどんなアーティストが出演するか」。特にフジロックとサマーソニックのメインアクトは、毎年大きな注目を集めている。

 2月9日には「FUJI ROCK FESTIVAL‘24」の出演アーティスト第1弾が発表された。1組目のヘッドライナーとしてアナウンスされたのは、ドイツのバンド「KRAFTWERK」(クラフトワーク)。2021年にロックの殿堂入りを果たした、テクノ・ミュージックのパイオニア的な存在だ。

 デュッセルドルフ音楽院でクラシック音楽を学んでいたラルフ・ヒュッター、フローリアン・シュナイダーを中心に、1970年に結成されたクラフトワーク(フローリアンは2020年に逝去)。1974年に発表されたアルバム「アウトバーン」で電子音楽をポップミュージック/ダンスミュージックに昇華した作品として高い評価を獲得。シンセサイザー、リズムマシーンなどを駆使した無機質なサウンドは“テクノ・ミュージックの源流”と位置付けられている。

 前衛性と大衆性を兼ね備えたクラフトワークの登場は、世界中のミュージシャンに大きな影響を与えた。それをいち早くキャッチし、自らの音楽性に取り入れたのがYMO(細野晴臣、坂本龍一、高橋幸宏)だ。

 細野は2020年6月の朝日新聞のインタビューで、クラフトワークから受けた影響を詳細に語っている。横尾忠則にアルバム「アウトバーン」のレコードを借り、衝撃を受けたという細野。「YMOのお手本にもなったクラフトワークはますます進化を続け、『MAN MACHINE』という最新作にぼくたちは打ちのめされました。音楽も音響も洗練され、ドイツ的な鉄壁のコンセプトは真似(まね)のできないことに気づいたのです。そこでYMOは障子や畳のような日本文化と電子音楽の融合を考え始めました」とコメント。YMOの特徴であるアジア的エキゾチズムは、「クラフトワークの真似はできない」という認識から生まれたというわけだ。

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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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