シリンジ法専用キット。写真提供=オンリースタイル

妊娠の確率が同じならストレスない方がいい

 友人がシリンジ法を知ったのは、通っていた不妊治療クリニックから聞いたことがきっかけだった。タイミング法のプレッシャーを和らげるための代替手段として、医師から紹介されたのがシリンジ法だ。医師は「専用の器具がなかった頃は、弁当などに添えるプラスチック製のしょうゆ入れを使うよう提案していた時代もある」と話し、シリンジ法は「セックスと同程度の妊娠率がある」と説明したという。半信半疑で試し始めた友人だったが、その手軽さにすっかり味をしめ、だんだんとシリンジ法が妊活の主流になっていった。女性は「めちゃくちゃオススメ」という友人の言葉を受け、ネットでシリンジキットを購入し、排卵日付近に試し始めたのだった。

 手順としては、別室で夫がマスターベーションで射精した精液を容器に入れ、シリンジを使って吸い上げる。女性は寝室で夫が精液を持ってくるのを待つ。シリンジの注入は夫にしてもらうこともあれば、タンポンを入れる要領で、自分で行うこともある。

 最初のうちは、あまりに無機質で淡々とした手順に、「これでいいのかな」という気持ちもあったという。妊娠は性交の先にあるべきものという感覚があったからだ。だがシリンジ法を試すうちに、「確率が同じなら、ストレスなくできる方がいい」と思うようになった。

「平日はワンオペ育児と仕事で、毎日へとへと。夫も仕事が忙しくて、夫婦ともに2人目が欲しいと思っても、排卵に合わせてセックスするのが正直しんどかった。共働き時代の今、そういう夫婦って結構多いんじゃないかな。シリンジ法は、その負担やプレッシャーをぐっと減らしながら妊活ができて、本当に救われる。時代に合った妊活のスタイルだと思う」(女性)

(フリーランス記者・松岡かすみ)

AERA 2024年2月19日号より抜粋

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