佐久間:愛のあり方や受け取り方は人によって違う。愛があってもいいことばかりではないという発想はなかったので、いろいろと考えさせられました。人によって受け取り方が違うのも、この作品の面白さ。吐夢について言うと、気味が悪い人物かもしれないけど、人間らしい魅力が隠れていることに気付いてほしいです。

土屋:輪花の役作りはできるだけそぎ落とし、あたかも土屋太鳳かのように存在することが必要とされました。(内田英治)監督とやりとりする中で悩んだこともありました。

 でも20代後半になり、現場での呼吸の仕方と日常の呼吸の仕方をマッチさせられるようになってきたから、お芝居のペースがつかめるようになってきて、監督とちゃんとキャッチボールができたと思います。お芝居をするためには、心が健康であることが大切だとも再認識しました。

言動をどう解釈したか

佐久間:僕は役を徹底的に深掘りします。吐夢の場合は、「何が原動力でこんなおかしな行動を取るのか」ということをじっくり考えました。その辻褄(つじつま)合わせをした上でお芝居に取り組まないと、何も考えていない人に見えてしまう。例えば、自分が好きなアニメ作品のことを語る時も、ただの説明ではなく自分がそのキャラクターの言動をどう解釈したかという要素を入れないと、熱が伝わらない。そこで学んだことが役作りに生きているのかもしれません(笑)。

―吐夢は一方的に輪花に執着し、ふたりの間にはディスコミュニケーションが横たわる。どんなふうに芝居をすり合わせたのか。

佐久間:相手が出してきたものを、どう受け取って応えるかが大切だと思います。吐夢は一方通行な想いのもとに発言をしていて、声も小さい。最初は「これで伝わるのかな」と不安を感じましたが、太鳳ちゃんへの信頼があったので、臆せずにお芝居ができました。

土屋:輪花はそのセリフに宿った情報量と一致した感情をちゃんと入れることが大切だと思いました。次々と起きていくつらい出来事をひとつひとつクリアして感情を作っていく作業は難しかったですが、ひとつのセリフに対する向き合い方はシンプルで、難しさは感じませんでした。

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