――どんな大学時代でしたか?
お友達がたくさんできて、楽しかった。クラスが四十何人かいるんですが、みんなと仲良しになって。私自身は空気が読めないほうだったんですが、それをみんなちゃーんと受け入れてくれるような感じ。サークルは、もともとバレエを6年間習っていて踊るのが好きだったので、競技ダンスをやりました。社交ダンスを競技としてするんです。
衝撃を受けたのは、これは男性が主体だとわかったこと。踊りを作るのは男性で、女性はそれに華やかさを加える役割です。上体を大きく反らしたり、猛スピードで走ったり、とてもきついんですが、2年間がんばって学年別戦で3位という成績を取れたので「卒業」しました。
――女子大には男性がいませんよね?
東大と組むんです。
――おそらく向こうには彼女探しという魂胆があったのでは。
だとしたら、私が非常に空気が読めないんだとよくわかる(笑)。私はその気は全然なかった。
――物理より数学のほうがいいと思うようになったのはいつごろですか?
それは大学に入ってすぐ。極限を定義するε-δ(イプシロン・デルタ)論法に触れて感激して、これが本当の数学だと思った。そのあともこれが本当の数学だと思えるような経験がいくつか積み重なって、大学院に行きたいなあと。
ただ、東京女子大の授業は大学院入学を想定していないので、自分で勉強するしかなく、過去問を見たりしたんですが、やはり自分が受けた授業ではカバーしきれないところがありました。3校受けて、かろうじて1校受かり、早稲田大の大学院に進みました。
大学院では代数幾何ばかりやっていました。なんか自分自身が変わっていくのが面白かった。下宿先で朝起きてご飯を食べて研究し始め、それで夜にお風呂の中で朝起きたときの自分と違っているような気がしました。
そういう経験ってそのときだけですね。あとにも先にもない。何か新しいものをすごく貪欲に吸収する時期だったのかなと思います。
――修士から博士に行くところでちょっと間があいていますね。
実は修士が終わった時点で、ものになるか心配になって、結婚したんです。