自分が話題の中心になっていないと不機嫌になる、ということはないようにしたい(※写真はイメージです Getty Images)

 過去の栄光にすがっているのか、自慢話を繰り返す高齢者――「老害」と呼ばれる現象の一つだ。しかし、東京大学名誉教授で失敗学の提唱者・畑村洋太郎氏は、それには理由があるという。自身の老いを痛感している畑村氏だが、新著『老いの失敗学 80歳からの人生をそれなりに楽しむ』(朝日新書)から、その理由を一部抜粋・改編して紹介する。

【図】キレやすい老人の脳の仕組み

*  *  *

 コミュニケーションがらみの老害に、自分の話ばかりをするというのがあります。嫌がられる老人の典型的な行動の一つです。私も以前、家族から「そういう傾向があるので気をつけて」と注意されたことがありました。

 といっても、私の場合は自慢話というより、話題にしていることについて自分が知っている知識を話したがることへの指摘でした。いろいろなことを観察しながら検討してきたからできることで、自分では「話の引き出しが多い」というふうにむしろ長所だと思っていました。仕事でもそういうところが重宝されて、「気付いたことをどんどん教えて」という感じで生産現場や事故の現場に招かれることがよくあります。そのせいか気付いたことをどんどん話す癖がついていますが、それを家庭の中でついやってしまうのがどうも評判がよくないようです。

著者プロフィールを見る
畑村洋太郎

畑村洋太郎

1941年東京生まれ。東京大学工学部卒。同大学院修士課程修了。東京大学名誉教授。工学博士。専門は失敗学、創造学、知能化加工学、ナノ・マイクロ加工学。2001年より畑村創造工学研究所を主宰。02年にNPO法人「失敗学会」を、07年に「危険学プロジェクト」を立ち上げる。著書に『失敗学のすすめ』『創造学のすすめ』など多数。

畑村洋太郎の記事一覧はこちら
次のページ
話題の中心にいないと気がすまない老人