国民党の集会では国旗が前面に登場(撮影:安田峰俊)

■国民党
 対する国民党は20世紀初頭に孫文が中国大陸で創設した政党だ。1990年代までは台湾で独裁統治を敷いていたが、やがて民主化に順応。中華民国国家の枠組みや党の伝統への愛着が強く、時期ごとのトップによる濃淡の差はあれ中国大陸との宥和を主張している。

 ただ、彼らも1990年代以降の台湾アイデンティティーの高まりは認めざるを得ず、権威主義的なイメージも完全にはぬぐえないため難しい立ち位置にある。支持者は昔から党を支持する外省人(中国大陸にルーツを持つ人たち)や、本省人の地方有力者らが多く、いずれも高齢層だ。価値観は基本的に保守的で、ジェンダーやLGBTQなど21世紀型の社会課題へのアンテナも鈍い。

 実際に1月6日に桃園市で開かれた集会や、1月13日に新北市で開かれた集会を見ても高齢者が目立つ(むしろ若者が野次馬的に見に行くだけで「若いのに偉いねえ」と周囲から褒められてしまう)。地方の里長や村長(日本の町内会長に相当)が地域規模で支持者を率いて参加する例が多く、会場付近に大量の「動員バス」が停まっているのもおなじみの光景だ。

 会場は中華民国国旗の洪水である。民進党の集会と比べて候補者演説はすくなく、歌謡ショーなどで間を持たせることも多い。高齢者の間を、中華民国国旗をあしらったミニスカートのドレス姿の色っぽいお姉さんが歩き回って接待する光景もみられる。当然、レインボーフラッグなどは絶対に出てこない。

 台湾では選挙期間中に各党・各候補者がLINEを使った メッセージ発信を行うことも多いが、民進党や民衆党(後述)と比較すると、国民党の発信はかなり低調でイベント予定が告知されないことも多い。国民党自身は、今回の立法院選での候補者の平均年齢を引き下げるなど若者向けの訴求も狙ったようだが、いまいちうまくいっていないようだ。

暮らしとモノ班 for promotion
窓拭きロボ、油なしのオーブン、脱臭ハンガー…家事に革命を起こす"時短家電”
次のページ
民衆党