そして、この目標設定が、他国は「打倒日本」となる。これは同じく2位通過となった韓国(グループEを1勝2分け)にも言えることだが、欧州トップリーグで活躍する世界的選手が増えたことで、対峙する選手たちのモチベーションは必然的に上がる。そこに近年、急激に進化し、言語化された戦術が、情報の均一化と欧州出身の監督たちの“伝達者”たちによってアジアの国々にも広まり、「日本攻略」の明確な方法と手段を持つようになった。それを前半44分まで続けたのがベトナム、90分を通して完遂したのがイラク、前半6分でプランが崩れたのがインドネシアだったと言える。

 これらの理由に加えて、経験不足で細かなプレーに粗さが見えるGK鈴木彩艶の責任が少なからずあったが、それ以上に森保監督は「外的要因」を指摘する。ラウンド16のバーレーン戦の前日会見で「苦戦という見られ方をしているところでは、日本、韓国の力をみなさんがリスペクトしているということを感じている」との言葉に続いて、「改めてアジア杯に出ている国々の力が拮抗していると感じている。苦戦しているというより、我々からすると難しい試合が多いということ。拮抗したチームの戦いが繰り広げられている。アジア全体のレベルアップがされていると思っている」と語っている。

 この「難しい試合」は、どれだけ日本代表が強くなったとしても続くことは間違いないだろう。なぜなら今後も日本は他国からの“標的”であり続け、今後さらに戦術と情報は均一化されていくからだ。中国の凋落ぶりが予想外ではあるが、中東の国々には潤沢なオイルマネーを自国のサッカー強化(施設の充実、選手の獲得を含めて)へ投資しており、東アジアではベトナムやタイ、インドネシア、ミャンマーなどの国々が、熱狂的な自国のファンの後押しと経済発展によって、日本を上回る成長曲線を描く可能性を持っている。

 世界を見渡すと、W杯での欧州予選、南米予選、アフリカ予選において、強国の「苦戦」は珍しくない。例え次回2026年の北中米W杯では、アジア枠が「4.5」から「8.5」に拡大してもだ。

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今回の大会でアジア最強を証明できるか