高松琴平電気鉄道/「前方よし!」。琴電琴平駅を訪れ、「ことでん」の制服に着替えて、車内から発車時の安全確認を体験する藤井聡太=2023年11月27日

「鉄道好き」としても知られる藤井聡太八冠。自他ともに認める列車に乗るのが好きな「乗り鉄」だ。鉄道を好きになったのは、将棋を始める前からだという。AERA 2024年2月5日号より。

【写真】ファンが「きゃ~、かわいい~!」 電車の前でポーズをとる藤井聡太八冠

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 いつも物静かなのに、鉄道のことになると、目をキラキラさせ饒舌になる。

「ことでんは、レトロな車両が結構多く活躍しているので。最近の車両とは違う雰囲気があって、とても面白かったです」

「ことでん」とは、香川県内を走る地方鉄道「高松琴平電気鉄道」の愛称だ。

 昨年11月下旬、藤井聡太八冠(21)は、ことでんの琴電琴平駅(香川県琴平町)で車掌体験を楽しんだ後、報道陣に運転士の体験について聞かれると、にこやかな表情でそう語った。

 藤井は、琴平町には「藤井聡太竜王の三連覇を祝う会」に出席するため訪れた。祝賀会から一夜明け、訪れたのが琴電琴平駅。車掌体験は、「思い出づくりに」と祝賀会の関連イベントとして開催された。

 ことでんの黒い制服に着替えホームに現れた藤井。まず、黄色い車体の「しあわせさん。こんぴらさん。」の前で車掌のポーズを決めた。続いて車内に乗り込むと、職員の説明を受けながら、車掌体験に臨んだ。

「前方よし!」

 と、指さし確認を行い、続いてアナウンスにも挑戦。

「緊張しますね」

 と、はにかみながらマイクに向かい、

「お待たせいたしました。本日は、ことでんをご利用いただきありがとうございます……」

 と、アナウンス。さらにドアの開閉をしたりブレーキ操作をしたり、警笛を鳴らす体験も。こうして、約30分の特別な体験を楽しんだ。

時刻表をほとんど暗記

 藤井を案内した、ことでん運輸サービス部係長の津田全史(まさし)さんは、振り返る。

「好青年で、将棋の対局の時に見せる厳しい顔と違って、楽しそうに体験される表情が印象的でした」

 藤井の「鉄道好き」は有名だ。自他ともに認める列車に乗るのが好きな「乗り鉄」で、子どものころの夢は「電車の運転士」。棋士にならなければ鉄道の運転士になりたかったと、あちこちで公言するほど鉄道愛は強く、ゆく先々で鉄道を楽しんでいる。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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