「無駄遣いは、お札をハサミで切るのと同じ」と話すのは、かつて「歩く百億円」と呼ばれた88歳の社長、吉川幸枝(よしかわ・さちえ)さん。実際に、水や電気の無駄遣いをする従業員に、1万円札とハサミを渡したこともあるそうだ。吉川さんは、「¥マネーの虎」にレギュラー出演(2001~04年)し、大きな宝石を身にまとうスタイルで有名に。現在も、現役の経営者として活躍している。吉川さんの著書『人生は80歳からがおもしろい』(アスコム刊)から、吉川さんの名言をエピソードとともに紹介する。

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水や電気の流しっぱなしも無駄遣い

 無駄遣いって、「悪」だとわかっていても、ついついしてしまうものですよね。

「ちょっとくらい構わないだろう」「多少の無駄遣いなんて普通のこと」と思いながら生活していらっしゃる人も多いと思います。

 でも、無意識にしてしまっている無駄遣いは、罪とも言えます。

 かつて私の会社で、こんなことがありました。

 ある従業員は、水道の水がチョロチョロ流れっぱなしになっていても、全く気にしない。電気のつけっぱなしに至っては日常茶飯事。

 いくら注意しても、なかなか意識を変えようとしてくれない。

「これはいかん!」と思った私は、ある時、従業員に1万円札とハサミを渡して、こう言いました。

「そのハサミで、1万円札を切りなさい」

 従業員は驚き、「なぜ、ハサミでお札を切れなんて言うのですか?」と尋ねてきました。

 そこで私は、こう言って聞かせました。

 水や電気はタダじゃない。出しっぱなしやつけっぱなしは、お金を無駄に捨てるのと同じこと。この1万円札にハサミを入れて、使い物にならなくするのと同じ。あなたがしていることは、1万円札を切るのと同じなのよ、と。

 彼は、お札を切ることができませんでした。

 以来、その従業員は、水や電気の無駄遣いに気をつけるようになりました。

 さらに、備品も含め、使わずに済むものは使わずに済ませる気配りをするようになりました。

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一万円札はおろか千円札もハサミで切れない