裏付けるような調査もある。国立教育政策研究所によれば、小中学生の全国学力テストにおいて「携帯電話やスマートフォンで通話・メール・インターネットをする時間が短い」「テレビゲームをしている時間が短い」児童・生徒ほど平均正答率が高い傾向がみられたという。

●ゲーム脳、スマホ脳の次は「ウェラ脳」が登場する?

 長時間同じ姿勢で目と脳を使えば、眼精疲労により集中力が奪われる。何かをすることそれ自体が別の何か(勉強や運動)の時間を奪うことも確かだろう。ただしこの調査報告がスマホ以外に携帯電話やテレビゲームを挙げているように、対象が何であろうと同じことである。根本的な対策はテレビやスマホ、パソコンに接する時間を制限するしかない。

 しかし「スマホの害はゲームやテレビ、パソコンのそれとほぼ同様であり、対策はなるべく使わないこと、以上」。では済まないのも実情である。スマートフォンが「スマート」である所以の「多機能かつ携帯可能」であることが、スマホと人々を離れ難くしているのだ。

 各種SNSやLINEなどのアプリによるコミュニケーション、ゲーム、動画や音楽の鑑賞、読書や情報収集など、すべてをこれ一台で済ますことができる。パソコンを電車やトイレ、ベッドに持ち込む人は少ないが、スマホではそれが普通である。これまでも人々はテレビやパソコンのモニターから離れにくかったし、ゲームやSNSに依存してしまう傾向があった。時間と場所を選ばず仕事にも余暇にも使えるスマホは、これら従来のツールの悪評を一手に引き受けてしまうほど強力な存在なのである。

 ディスプレイそのものに「目にやさしい」ブレイクスルーが起きれば、主に眼精疲労からくる身体的な影響は解決されるかもしれない。依存性の高さによる精神的な影響や時間配分の問題については、個々人で律するしかない。つまり対応が困難だ。次にウェラブル端末の時代が来たら「ウェラ脳」が問題となっていることだろう。

(工藤 渉)

参考:総務省情報通信白書 平成26年

国立教育政策研究所 平成26年度全国学力・学習状況調査の結果