ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの連載「今週のお務め」。30回目のテーマは「『性加害』報道と性的同意」について。
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「不倫スキャンダル」だけでは飽きたのか、近年は「性加害系スキャンダル」が主流のようです。肉体関係を強要された場面で、どのようなシチュエーションで、どのような言葉をかけられ、どのような格好にさせられ、どのような「人には言えないような行為」をされたのか。そんなことが実に詳細に写実的に書かれている週刊誌が飛ぶように売れているという国民総ど変態の状況です。
週刊誌側の言い分としては、「被害」を訴えている人がいる限り、彼ら彼女らの声が埋もれないよう、さらには同じような「性加害」が起きないためにも、誌面をもって世の中に告発をするということなのでしょう。
その大義名分に関しては、それなりに賛同できるところはあります。しかしながら、彼らが毎週・毎号、事細かに掲載している「性加害」とされる現場の描写。あれは、はっきり言って、「性被害撲滅」「新たな犯罪の抑止」にはなっていません。
昨年のジャニー喜多川氏の報道の時にも書きましたが、彼らの写実的文章を読んでエロい気分になる人、興奮して自分も何かしたくなる人、もしくは自分の知らない性的嗜好に目覚める人が、かなりの数いるからです。ともすれば「性虐待」や「性加害」を煽っているとも言えます。
此度の松本人志さんに関する記事も、いくつか読みましたが、結局のところ、週刊誌もネットニュースも、本気で「性被害撲滅」「性被害者救済」を考えて記事を出しているものなど、ほとんどないというのが私の印象です。
むしろ「性被害」や「セクハラ」や「パワハラ」などは、すべて飯のタネであり、売り上げを得るための優秀な道具ぐらいにしか思っていないのが本音でしょう。