かつて「スチュワーデス(今はCA)」や「歯科助手」が合コンの華であったように、「レンタルビデオの店員」に萌えたり、宅配業者のお兄さんにムラムラしたり、「大学生」とか「JK」なんて言葉に興奮したりするのも、もはや市民権を得た文化です。私ももし「好きな男リスト」を作れと言われたら、「佐川」とか「シェル」とか「アイスホッケー部」などと書くでしょう。知らない男は「1本」「2本」と数えるのも、ゲイの文化のひとつだったりします。

 そして、近年やたら見聞きすることの多い「性的同意」という言葉。今では「性的同意アプリ」なんてものも存在するそうで、たとえ夫婦間であっても「望まないセックス」をさせられる人たちが少なくなるようにという問題意識から、世界中に浸透している新しい観念ですが、これまた何をもって「同意」とするのか、判断が難しいところでもあります。

 確かに、いい感じのムードになって、抱き合って、キスをして、きわどいところに手を伸ばしたところで、「ストップ!」と言われた経験は数えきれないほどあります。もちろん、そこからさらに押して成就したこともあります。しかし、この「押す・押し切る」というプロセスが、近年は「強要」や「加害」と見做される可能性があるわけです。

 私なんて、頑張って押さなければ誰も何もさせてくれないのに、その都度「いい?」と口に出して、ともすれば録音までして意思確認をしなくてはならないのか? 遊び半分、もしくはうっかりオカマといたしてしまうノンケ男性らのほとんどは、後日後悔したり自己嫌悪に陥ったりしているに決まっています。そういう人たちをこれ以上出さないために、私も「性的同意」なるものには、細心の注意を払って生きていく必要があると、改めて肝に銘じた次第です。

 ドラマ「東京ラブストーリー」で、ヒロインの赤名リカが、夜の歩道橋の上で、高らかに「ねえ、セックスしよう!」と言い放つシーンがありましたが、今後「性的同意」を取り付ける必要がある場合は、これでいきたいと思います。

 それすらもセクハラで訴えられたりして。
 

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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