だってね、災害時や緊急事態が起きたとき、状況を正しく判断できなければ死んでしまいますよね。体操の技ができる・できないは、実は二の次。まずは人として、生きることに必要な能力を身に付けてほしいと思っています。体操の前に、この世を生きていかなきゃいけない。「生きていればなんとかなる」が私のモットーです。
――レッスンのなかで、「よくできたね~」と大きな声で子どもを褒める姿が印象的でした。
あまり大げさに褒めすぎるのもよくないんですが(苦笑)。褒めすぎてもダメだという性格の子は控えめに褒め、もともと運動が苦手で「自分はできないもん」と言っていた子には「やればできるじゃない。あなたはできるんだよ!」とプラスで褒めて自信をつけてあげます。それぞれの子で求めるもの、必要なことが違うんです。それを見極めるのは指導者の力量。
私はたくさんの子どもを見てきているので、しばらく様子を見ていると、その子どもの特徴を理解できるようになりました。ただ、多くの指導経験はあるけれど、学問的な知識がない。もっと指導者として向上したい、子どもの心を理解することは絶対に必要だと考え、2020年4月から今現在も、長崎純心大の大学院に通って児童心理学を勉強しています。
――航平さんが幼かったころと今とで、“周子メソッド”は変わっているのでしょうか。
基本的には変わっていません。英才教育をするのではなく、「一つのことに集中する」ってことだけを徹底してきました。でも昔は、もうちょっと叱っていたかな? 今のほうが私も経験を積んだぶん、うまくやれているような気がします(笑)。
過去の反省は一つだけ。怖がってやらない子に、できるまでやらせたことがあったんです。その子は結局、数年後に体操をやめてしまった。我が子だったら、「まあいいか」となっていたと思うのですが、ほかのご家庭の大切なお子さまだからこそ、結果を出さなければいけないと思ってしまいました。「この演技を入れないと試合に勝てない、じゃあやらなきゃいけないでしょ」と。今は、やりたいならとことん付き合うけど、怖くてやりたくないなら別の得意な技を伸ばそう、という考えができるようになりました。