「投稿を見た人から、『忘れてないですよ』『大丈夫、がんばって』『謝らなくていいですよ』という声が届いて、うれしかった。同じ能登町で被災した人なのか、『ほんと、そう!』って共感してくれる人もいました」

 地震発生から日が経つにつれ、公民館に避難する人も増えていった。ただ、パーテーションはなく、プライバシーもゼロ。足を伸ばして寝ることができず、お風呂にも入れない。教室2つぶんほどのスペースに100人以上の人が集まり、ピリピリした空気が漂った。

津波の跡が残る家屋。2メートル近くまできていたという(坂口歩さん撮影)

 家族全員の車が流され、金沢にいつ戻れるかもわからなかった。だが、7日の朝。避難所にいた女性に声をかけられ、一緒に金沢に向かうことになった。

「2時間後出発ね!って感じでした。そんなに戻りたいとは思っていなかったんです。でも、私のメンタルも終わってたし、避難所から一人でも多く出てほしいという状況だったから。(能登を離れることも)怖いし、一人だけ金沢に行くのも申し訳ないし、でもここから出たほうがいろんな意味でいいんだろうな、って」

 地震の揺れで、金沢の自宅もぐちゃぐちゃになっていた。だが、蛇口をひねれば水が出て、スイッチを押すだけで電気がつく。その一つひとつに感動した。

「能登はいいところ」だから忘れないで

 金沢に戻ってから、友達や大学の先生の支えで、少しずつ前を向けるようになっている。それでも、不安は尽きない。

「とにかくお金がなくて、他にも困っている学生がたくさんいると思います。大学も就活、生活するのにもお金が必要で……。なかなかしんどい状況です。奨学金の情報とか、なんでもいいので教えてもらえるとうれしいです」

 と小さな声でつぶやいて、こうも続けた。

「ツイッターで津波の動画が上がっていたりして、そういうのを見たら『能登怖い』『行きたくないな』って思う人がいっぱいいるんじゃないかなってのがすごい不安で。でも、能登ってすごいきれいなところで、本当に穏やかで、めちゃくちゃいいところだからそれを忘れないでほしいんです」

地震が起きる前に撮影した能登。やわらかい光と穏やかな海が美しい(坂口歩さん撮影)

(編集部・福井しほ)

AERAオンライン限定記事

暮らしとモノ班 for promotion
大谷翔平選手の好感度の高さに企業もメロメロ!どんな企業と契約している?
次のページ
【イラスト】地震発生から避難するまで