携帯電話もつながらず、ラジオの電波も途切れがちな被災地では、自分たちが置かれた状況を把握することもままならなかった
この記事の写真をすべて見る

 非常時にSNSで拡散されやすい流言やうわさ。能登半島地震で被災した人の目にどう映るのか。AERA 2024年1月22日号より。

【写真】非常時に拡散されやすいデマのパターンはこちら

*  *  *

 特に、多くの人が不安や怒りを共有する災害時は流言やうわさが広がりやすい。中には使命感などの「善意」からデマを拡散してしまうケースもあった。

 ある男性は、生まれ育った場所の役に立ちたいという思いから能登半島地震の発生以降、SNSで情報発信を続けている。公的機関からの呼びかけのほか、被災地に住む人からの要望や現地住民にとって必要な情報を投稿してきたという。

 だが、支援に訪れた企業の車を被災地に侵入して金品を盗む「火事場泥棒」だとする誤情報を拡散し、批判が殺到した。男性は言う。

「デマ情報の危険性はとても高く、投稿した人だけではなく拡散能力を持った者に矛先が向けられます。やりづらい気持ちと罪深さを感じざるを得ません」

 それでも発信をやめるつもりはないという。

「こんな私にも『情報助かってます』『拡散をお願いします』『続けてください』などの温かい声援、お言葉をいただいているからです」

 防災・危機管理サービスを提供する「Spectee(スペクティ)」が20年に行った調査では、8割以上の人が災害時にSNS情報の有用性を感じると回答している。同社代表の村上建治郎さんも、「被災地から発信される情報は有益」だと話す。

 だが、安易な拡散には否定的だ。

「メディアもすぐに被災地に入れるわけではないため、被災地からの情報は現場の状況を把握するためにも有益だと思います。ただ、その情報を見た人ができることは『頑張れ』と応援することぐらいしかない。拡散するのではなく、冷静に情報を見ることも大切です」

SNSで情報調べない

 災害時にSNSで飛び交うデマは、被災した人の目にどう映るのか。能登町の実家への帰省中に被災した東京都に住むみつごごさん(36)は、

「SNSのデマ情報で右往左往することがなかったのは、ある意味幸いだったかもしれません」

 と振り返る。能登町では、1日の地震で全域が停電。2日未明には実家近くの携帯電話基地局のバッテリーが切れ、情報源がラジオのみになってしまう。

次のページ