「非常時に飛び交いやすいデマにはさまざまなパターンがあります。たとえば、2016年の熊本地震では動物園からライオンが逃げ出したとするツイートが拡散しました」
無論、ライオンが逃げ出したという事実はなく、投稿した当時20歳の会社員男性は偽計業務妨害の疑いで逮捕された。それでもなおデマ情報の投稿は後を絶たず、18年の大阪北部地震や22年の台風15号の大雨被害などでも流言が飛び交った。
一分一秒を争うなか、なぜこうした投稿が繰り返されるのか。東京大学大学院の関谷直也教授はこう話す。
「デマ情報を発信する背景には、自分の投稿を見てみんなが騒いでいる状況に面白さを感じるといった心理的報酬を得られることがあります。金銭的報酬はなくとも、承認欲求が満たされるんです」
こうして投稿されたデマは、受け取った人によって拡散されていく。関谷教授は、SNSは正確な情報をやりとりする場所ではないと認識することが重要だと指摘する。
「知り合いが被災した方の発信や公的な情報は判断の根拠になると思います。ですが、そもそもSNSはその時々の感情を共有するツールです。正確な情報もあれば、間違っている情報もあるのだと知っておくことが大事です」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2024年1月22日号より抜粋