女子学生を増やす環境整備
名工大の東4キロほどのところにある名古屋大学は、23年度の工学部の入試から女子枠を設けた。
その理由について、同大の宮崎誠一工学研究科長は、こう説明する。
「トヨタに限らず、半導体メーカーも含めて、産業界からの女性人材のリクエストはずっとありました。企業にとって、女性目線での製品開発というのは不可欠です。例えば、性能が同じであっても、カラーリングやデザインが異なれば売り上げがぜんぜん変わりますから。それと、ダイバーシティー、女性や外国人も含めたなかで、多様な社会ニーズに対応することが重要です」
女子枠の募集人員は電気電子情報工学科6人、エネルギー理工学科3人。選抜は学校推薦型で、共通テストも課す。
「名大の工学部には7学科ありますが、化学生命工学科と環境土木・建築学科では、女子学生の割合が20%を超えています。ところが、電気電子情報工学科とエネルギー理工学科は特に少なくて、6%前後しかいない。ですから、その二つの学科を先行して女子枠を実施しました」(宮崎工学研究科長)
取材をして特に印象的だったのは、名大は女子枠を設ける以前から、大学全体として女子学生が学ぶ環境を着々と整えてきたことだ。
「女子学生を増やすには、女性教員も増やさなければなりません。でないと気軽に相談もできませんから」(同)
女性教員比率を向上させるために、積極的改善措置(ポジティブ・アクション)を打ち出した。教員公募の際、業績評価において同等と認められた場合、女性を積極的に採用する。
「女性教員の場合、お子さんができたとき、男性教員よりも負担が大きくなります。なので、大学内に保育園など、子どもを預かる施設を整えています。女性専用のリフレッシュルームも整備しました」(同)
名大は工学部に興味を持つ女子高生を主な対象として4年前から「女子学生のための工学フォーラム」も開いてきた。