議論の“火付け役”となった料理研究家のリュウジ氏

国民的グルメ漫画の影響

 例えば『美味しんぼ』の第9巻に「日米味決戦」というエピソードが収録されている。この中で「スッポンのお吸い物を3椀味わい、どの椀が一番おいしいか投票する」という場面が登場する。

「素人はイ、ロ、ハの3椀のうち、イが最もおいしく、ハが最もまずいという評価が多数を占めました。ところが和食の料理人、豆腐料理の研究家、そして大手漬物メーカーの社長は、ハを最もおいしいと評価していたのです。なぜプロと素人の評価が異なったのか、その理由として主人公の山岡士郎はうま味調味料を挙げました。イの椀にはうま味調味料が最も入っており、ハの椀には全く使われていなかったというものでした」(同)

 主人公の山岡は、うま味調味料を「かくし味程度に使うならまだしも、大量に加えてしまっては何を食べても同じ後味が残ってしまう」と批判する──というストーリーだ。

 たしかに「美味しんぼ」はプロからも称賛された作品だが、漫画であるがゆえの脚色もあるだろう。かつて、「吉兆」の創業者である湯木貞一氏はこんな言葉を残している。

《私は、まだ味の素が出はじめたころ、世間ではいろんな悪口をいっているときに、真先に使わせてもらったものです。おかげで吉兆の料理はうまい、などと言われた一つには、そのおかげもあったかもしれません》

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